東京医科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問6題
分析担当
谷 卓郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 なめらかな床に置かれた斜面を滑り降りる物体、慣性力、相対運動 マーク式 標準
2 弦の振動、単振り子、鉛直方向円運動 マーク式 標準
3 磁場に出入りする正方形コイル マーク式 標準
4 誘電体が挿入されるコンデンサーを含む回路 マーク式 標準
5 半減期 マーク式
6 断熱ピストンでつながれた2つの密閉容器 マーク式 やや難

問題分析

  1. 摩擦のない床に置かれた斜面を滑り降りる物体。慣性力を考えるが床から見た視点のことも訊かれている。やや難しめの問題集には必ず載っている問題設定。よって難易度は標準とした。
  2. 水平に張られた弦の先になぜか振り子がついている。基本振動しか関わらなく、実質単振り子。使うのはいつもの公式と力学的エネルギー保存だが、弦が描かれた図から力学(円運動)への転換が初見でできるかどうか。よって標準とした。
  3. 正方形のコイルが磁場に対し垂直に侵入し出ていく。コイルには、よせばいいのに抵抗と電池かコンデンサーを接続する。外力、仕事、消費電力などが問われるが、こちらもやや難しめの問題集では必ず載っている。よってこれまた標準とした。
  4. 誘電体が中途半端に接続されたコンデンサーを電池につないだり、誘電体をさらに押し込んだり。こちらも標準レベルの典型題
  5. 崩壊前物質と後物質の質量比から経年数を計算させる問題。特に複雑な状況ではないので易とした。
  6. 断熱ピストンにつながれ、平行に置かれた二つの容器。γの入った断熱変化の公式を使いこなせるかどうかがポイント。それ自体は典型処理だが、さりとてその計算に慣れている受験生は少ないと思われる。よってやや難とした。

総評

 上にも書いたが第1、3、4問はやや難しめの問題集を買えば必ず載っている問題設定。これまでに十分な練習をしていればすんなり、とはいかないかもしれないが、多少てこずっても解けるはず。練習量をこなしたおかげで、すでに答えを憶えていた受験生もいたかもしれない。第6問もそれに該当するが、比熱比γの入った式を変形しなければいけず、やりこんでいないと計算の方針が立てにくい。必要な式は揃っているもののいじくりまわしても答えにならなく焦るばかり、という様子が目に浮かぶ。最後の問題なのでそこで力尽きた受験生も多かったであろう。第2問は弦の振動の見掛けをしながら、実際の計算は鉛直方向円運動での力学的エネルギー保存。いつも通りの処理だが、弦を考えていた頭でいきなり力学、運動方程式と力学的エネルギー保存則を立てることにスイッチしなければいけない。典型問題の暗記から脱却できない受験生には厳しかっただろう。第5問は半減期の問題で、質量百分率から原子数比を出し、そこから経過年数を出す問題。特に現役生を中心に原子物理が苦手な受験生は多いが、この程度は解けなければいけない。
 大問数が7問から6問に減ったがやや難しめの題材が増えた分、多少難化して標準的なレベルになった。本学はマーク式でも数値を答える問題があり、思ったより時間を取られるので気を付けたい。すべて数値計算であった3年前までよりは比重は低下しており、来年以降がどうなるかはわからないが気を付けたい。また、必ず原子物理が出題されているので苦手としている受験生はしっかり対策しておくこと。
 昨年までは基本~標準レベルの大問7つという構成だったが、今年は大問数が減って問題難易度が上がった。それでも、何度も書くが、やや難しめの問題集に載るレベルの典型問題程度。演習をする中で、ただ答えを出す手順を憶えるのではなく、その裏にある物理背景をしっかり把握することを心がけよう。