出題内容・難易度

問題分析

3. 本文のパラグラフ展開と基本的に一致する形で選択肢が配列されている。また、本文がかなり長いので、それを通読してから選択肢の英文の真偽を一挙に判定するよりは、いくつかのパラグラフ毎に判定していく方が望ましい。本問の特徴は、第6問が大局的な理解力を求めているのに対し、精読的な理解力を求めているところにある。特に解法としては、「否定と肯定とのすり替え(例えば、本文が肯定文で選択肢が否定文である場合)」や「語句のすり替え(本文中の語句を選択肢で他の語句に替えている場合)」などに気を付けたい。特に年度や人名などの固有名詞はよくすり替えられる。配点は48点[各2点×24](40%)ほどであろう。
4. 本文の内容を前提として答えるので、単純な英作文の問題ではない。「論文で提示された情報に基づいて」「自分自身の言葉を使って」と条件付けられている様に、客観的な記述が必要である。なお、この問題の設問文を先に読んでおけば、本文の鳥瞰図が取れることにもなる。さほど長い記述は求められていないので、配点は18点[各6点×3](15%)ほどであろう。
5. 難解な語句や構文はない。特に本年度は例年以上に簡単で、語句はもとより構文も際立ったものはない。そうであるが故に、全体の内容を捉えた自然な日本語訳が求められる。とは言え、この程度なら、配点は12点[各6点×2](10%)ほどであろう。
6. この論旨要約問題には、本文全体の「テーマ」と「キーワード」が3つ与えられている。その意味では、本学の問題を効果的に解くためには、第4問と共にこの第6問の設問文を先に読んで、全体の論旨を念頭に置いてから本文を読み始めるのがよい。また、答案作成の練習のために、本学の過去問はもちろん、他大学の問題を含めて、400字以内にまとめることを日常的にしておくことが必要である。特に、それを書いただけで満足せずに、講師に添削してもらうのが望ましい。英作文と同様に、要約のスキルも指導を受けてこそ伸びるものである。配点は42点(35%)ほどであろう。

総評

 例年通りの出題で、大問1題(第3～6問[第1・2問は他学科用])、 120点満点で構成されている。英文のテーマは「犬の自己家畜化とそれに伴う変化」で、語数は約1,600語である。「家畜化」に伴う動物の生態学的変化は、横浜市立大(2021)、一橋大(2020)、愛媛大(2015)、東京学芸大(2015)、九州大(2010)などでも出題されている頻出テーマである。特に本学は、過年度でも動物行動学に関する問題が散見される。「類人猿を動物園で飼育することの是非」(2017)、「介助犬の役割と有用性」(2013)、「カラス科の鳥の知能」(2009)、「猿の飲酒」(2006)などがそれである。その意味では、当該分野に関する文献を読み慣れておくことも必要であろう。もっとも、医学部らしく医療系英文もしばしば出題される。「朝食が人体に及ぼす影響」(2020)、「有史以前のがんの発生率」(2019)、「災害医療」(2018)、「塩分摂取が人体に及ぼす影響」(2015)がそれである。その意味では、医療系分野の教養的知識も併せ持ちたい。ただし、英文そのものは読みにくいものではなく、また設問の難易度も第6問の要約問題を除けば全般的に標準的である。その点では、京都府立医科大など難度が高い問題とは違う。とは言え、総語数が多いので、速読はもとより多読的訓練が必要である。要は、このレベルになれば、逐語的に日本語に置き換えるのではなく、述べられていることを全体として捉えていかなければならないということである。不明な語句があっても辞書を引く作業を意識的にしないで、前後の脈絡から推測しながら読み進める訓練が必要である。以上を総じて、東京医科歯科大はその名にし負う問題を出すと言える。