東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 呼吸と発酵について 語句挿入・説明記述・
計算
標準
2 神経について 語句挿入・理由記述・
グラフ描図
標準
3 プログラム細胞死について 考察記述・記号選択・
理由記述
標準
4 体液について 語句挿入・理由記述・
考察記述
標準

問題分析

  1. 慈恵ではおなじみの呼吸と発酵。説明記述は代謝の分野であるが、計算は遺伝と発現のジャンル。それでも「見たことない」ものは出題されていないので、標準的からやや簡単な部類に入る。
  2. 記述問題と計算問題が問3から続く構成になっており、少し苦労した印象を受ける。いずれも実験の考察ではあるが、基本的で計算も平易である。記述量こそ多いが、大きく時間が割かれることはない。グラフは方向と距離に注意。
  3. 「わかることを述べよ」「どのようなことが考えられるか」と少し曖昧な質問内容であることで解答作成に戸惑うこともあるであろうが、テーマ自身は既知のものであるが故に解答の論点は搾りやすかった。ここの記述のスムーズさがポイントになったであろう。後半は植物の落葉について。こちらは単純に知識を問う形であった。
  4. 体液についての問題。胎児ヘモグロビンの性質やアルブミンの働きなど知識の説明記述が多く出題された。後半はコロナウィルスについての記述であり、これは少し想像力が必要であった。

総評

 東京慈恵会医科大学の問題は代謝と動物生理が頻出であり、それに発生と遺伝子発現や遺伝が加わり、生態系や植物もちらほらという構成で、きわめて一般的である。「問題集的」であるのはどの問題もかつてどこかで見たことがあるものが多く、オリジナリティがある故に腰を据えて考えることが少ない練習がそのまま得点に反映される形である。かつては複雑な計算や塩基配列の解読などで時間が多くとられたがそれらの出題はほとんどなく、一見時間配分は楽なように見える。しかし、大問2や3が記述中心で、聞かれ方もあいまいな部分があり、「小さな医科歯科大」「小さな慶應大」の雰囲気を持ち始めた。こうなると意外に時間はタイトになり、気が付けば時間が経っていたことが予想される。  このような傾向であるので、上記の医科歯科大や慶應大など上位国公立や私立医学部も視野に入れている生徒にとってはテーマが「問題集的」である分、解き易い部類になると思われるが昭和大や日本医科大などを視野に入れるタイプは苦労をしたかもしれない。
 それでも基本的には「問題集的」であるので、「理系標準問題集」(駿台文庫)などの標準的な問題集の完全な理解がまずは必要になってくる。他にも「合格177問」(東進ブックス)など標準問題を網羅的に扱える問題集を複数演習することは必須である。それでも「パルスオキシメーターは肺の障害による血液の酸素濃度の低下を初期段階でつかみにくい。その理由を述べよ」など少し「新書的」な教養に迫った問題も見受けられる。このときのテーマがコロナウィルスであることも「新書的」である。
 基本的には「問題集的」でありながら、記述量を増やして時には「新書的」に教養も必要とされる「ハイブリッド」な問題傾向に変わりつつある慈恵の生物。慈恵以外の併願校との兼ね合いを行いながら、「医科歯科大の記述の予行演習」として扱うのか「私立医学部最後の総まとめ」として扱うのかで対策方法は大きく変わりそうである。