昭和大学
基本情報
試験時間:2科目140分/問題数:大問4題
分析担当
勝亦 征太郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 免疫
(獲得免疫、リンパ球の分化、ツベルクリン反応)
記述式、描画 やや易
2 細胞分画法
(細胞の構成成分、細胞小器官、呼吸)
記述式 やや易
3 植物の花芽形成
(光周性、光中断、フロリゲンの実態と働き)
記述式 標準
4 聴覚
(耳の構造、聴覚成立のしくみ、音の高低の識別、難聴)
記述式 標準

問題分析

  1. 免疫に関する問題。問1の(オ)のヘルパーT細胞が抗原提示を受けた後にキラーT細胞やB細胞だけでなく自然免疫細胞も活性化すること、問3のT細胞の選択機構についての記述、問8のツベルクリン反応についての問題はやや細かい知識を要する。しかし、医学部受験生ならば免疫に関してここまで学習していて欲しいところ。それ以外は平易な問題で、完答を目指したい。
  2. 細胞分画法に関する問題。問3の記述では粉砕する際の摩擦熱と細胞内の分解酵素の影響という2点に触れたい。問4は核内に核小体が存在していることを忘れないように。問6はピルビン酸が生じるのは解糖系の最後だから細胞質基質だ、と安易に答えないように。問5がヒントになっていた。問7はリボソームに生体膜はないと思いながら選択肢を見て戸惑ったかもしれないが、粗面小胞体の存在に気付ければ正答は容易い。全体として問題文もシンプルで理解しやすく、ここも完答を目指したい。
  3. 植物の花芽形成に関する問題。問3では図と表を上手く照らし合わせて考えることができたかで、正答率や解答するまでに要した時間に差が付いただろう。特に(3)と(4)は見慣れないタイプの問われ方で、対照実験への意識が薄い受験生は何と何を比較して考えればよいか困惑しただろう。問4のフロリゲンの実態については教科書にも記載がある知識で覚えておきたい。問5は現象を知っていたかだけでなく、各設問で問われていることに正しく答えられたかもポイントになる。(1)は動態、(2)は機能、(3)は条件、(4)は影響、(5)は遺伝子発現レベルの変動、を問われていた。それぞれ適切な内容で答えることで完答となるだろう。
  4. 聴覚に関する問題。問1の(エ)はうずまき管を満たしているリンパ液が振動し水面の波のように音が伝わる(進行波という)ため、リンパ液と答えるのが良い。問3は受容細胞の繊毛の意義を知らなくても、小腸の柔毛の構造の意義を思い出して表面積を大きくして吸収できる領域を広げていた、という発想から答えられた受験生も多かったのではないか。問4では久しぶりに100字という字数の多い論述問題となったが、医学部入試においては典型問題と言える内容、かつ問題文の2段落目に基底膜の幅について記載があったため、これを参照しながら現象を正しく論じていけば困ることはなかっただろう。問5は耳というのは空気の振動(音)という物理的エネルギーを中耳で増強して内耳に伝え、内耳で電気的エネルギーに変換する装置という認識を問われている医学部らしい問題。問6は聞きなれない2種類の難聴についてだが、違いを文章から正しく区別できれば苦労はしなかっただろう。

総評

 大問数は昨年度と同様の4題。大問1、2は昨年度と同様の基本~標準レベルの知識を使った用語穴埋めや記述問題が大半で、描画問題はマルを付けるだけのものが1問、計算問題もシンプルなものが1問。ここでの失点は極力減らしたいところで、大問1、2両方を完答する受験生も程々に出たはず。差が付いたのは用語穴埋め、表や図を使った考察問題、記述問題という構成だった大問3と4だろう。問われ方がシンプルで明快なだけに、何を問うているのかを確実に把握する能力と、学習してきた内容と問題文に記載されている内容を生かして正答にたどり着くための能力が求められていた。昨年度よりは明確に難化したが、それでも例年通り正しい知識とその知識を使った考察や記述がメインであり、そのレベルは基本~標準というものがほとんどである。教科書の精読による知識定着と、教科書傍用問題集などの反復演習による知識の使い方の習得、そして解いた範囲の内容を資料集で確認する地道な積み重ねを習慣化することで高得点が期待できるだろう。