日本医科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
竹内 純

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
実在気体、硫酸の性質、
ヘリコバクター・ピロリの検出法
記述式 標準
溶液の蒸気圧降下 記述式 標準
薬物の構造決定 記述式 標準
配糖体、染料 記述式 やや難

問題分析

  1. 昨年度はコロイドや第2周期14~17族水素化合物についての平易な知識問題が中心であったが、本年度は問1、問3に論述問題が4問出題された。知識問題である問2を確実に解答した上で、これらの論述問題をいかに手早く解き進められたかがポイントとなる。特に問1の実在気体に関する論述は、市販の問題集でも扱われるテーマであり、習熟度が影響したと思われる。
  2. 希薄溶液の沸点上昇に関連する内容であるが、沸点上昇度や質量モル濃度を扱う典型問題とは異なり、蒸気圧降下に主眼が置かれている。問2の論述問題は、典型問題で利用する沸点上昇度の公式の導出につながる内容であるため、暗記一辺倒でない本質的な学習を行ってきたかどうかで差がついたと思われる。また、計算問題の3問目は、弱酸の電離平衡を考慮する必要があり手間がかかる設問で、問2同様に差がつきやすいものであった。
  3. 分離操作、元素分析、中和滴定の結果や、置換基の条件などから構造を決定していく標準的な有機構造決定問題である。しかし、問1の分離操作の結果はすぐに答えることはできないうえ、元素分析の結果は整数比にするにはやや誤差が大きいため、これらの情報を単独で検討していても結論が出ない。中和滴定の結果から、薬物分子が何価の酸であるかを自分で仮定して分子量を表し、元素分析の結果や置換基の条件と矛盾がないかを確かめながら構造を決定していくことになる。なお、中和滴定ではブランクテストが行われており、問2はこの操作に関する論述問題であった。
  4. 前半は単糖類・二糖類に関する基本知識問題であり、確実に解答したい。後半はア、イの葉から得られる配糖体と染料に関する内容である。分子式などの情報から、配糖体の加水分解反応の量的関係や染料の構造式をおおまかに予想することはできるものの、出題されている染料に関する知識がない状態で問3や問5、問6を正解するのは困難と思われる。染料は教科書などにも記載されている話題だが、学習上扱うことは少なく、盲点になっていた受験生も多かったであろう。

総評

 例年と同様に大問4題構成で、やや易しかった昨年より難化し、例年並みの難易度になっている。ただし、過去問と比較すると時間を要する煩雑な計算問題は少なかった分、論述問題がかなり多く出題されており、論述の苦手な受験生には例年以上に難しく感じたであろう。また、例年通り問題量に対して時間の余裕がないので、大問[Ⅰ]や[Ⅱ]の一部の論述問題および計算問題のように、典型問題に慣れているかどうかが所要時間に影響する設問は、差がつく一因になったと思われる。本学入試問題の有機構造決定は標準的なものが多いが、大問[Ⅳ]のように、生活に関連する有機化合物や高分子化合物については見慣れない物質も登場しやすい。教科書の様々な事項や典型問題を応用して推定・思考する力が問われる。
 このように、近年の本学の入試は、難関国公立大学入試に近い問題構成になっている。受験生においては、基本的な事柄についても、起きている現象や実験操作の目的について文章で説明できるようにしておくことが必須といえる。その上で、本学のみならず難関国公立大学の過去問なども用いながら、論述問題への対策を十分に行っておく必要がある。