日本医科大学
基本情報
試験時間::60分(2科目120分)/問題数:大問3題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
脊椎動物の陸上進出 記号選択 標準
細胞内のたんぱく質 記号選択、並び替え
爬虫類の性決定について 記号選択、記述 標準

問題分析

  1. カエルの変態についての実験を中心にした問題。考察で前半は構成されているが、後半は知識問題で構成されている。知識はいずれも平易。
  2. たんぱく質についての知識中心の問題。ここは全問正解が望ましい。神経伝達の順序を訊く問題が出題。この大学は「順序」を毎年のように出題しているが、基本的なものである。
  3. EPO遺伝子の発現についての実験考察。それぞれの調節遺伝子の働きを問う問題がメインであり、その根拠となる実験の選択を含んでいる。表だけでなくグラフも利用している部分がやや新しいといえるかもしれない。基本的には例年通りであり、この形式に慣れた生徒にとってはそれほど難しいと感じるものではなかった。

総評

 相変わらず過去問を踏襲した問題形式である。考察が半分、知識が半分の〔Ⅰ〕、知識のみの〔Ⅱ〕、考察中心の〔Ⅲ〕という構成もこの10年近く変わっていない。昨年、コロナの影響で系統についての小問がなかったが、本年は脊椎動物の進化に関する問題として出題されている。順序を問う問題も教科書レベルで推移しているのも例年通り。計算もなく、記述も最後の問題で簡単に理由を述べるもののみとなっており、かなり難易度は低い印象をもつ。80%でもアドバンテージがあるかどうかという内容になっている。取りこぼしが許されないものになっており、私立専願の生徒は考察の確かさ、国公立併願組は私立特有の知識の正確さがポイントになってくる。
 植物と個体群の頻度が低く、発生は遺伝子発現とセットになっているという傾向も変わっておらず、いわゆる「医学部」らしい単元での正確な知識と考察力を要求される。全範囲を満遍なく出題する大学とは傾向が異なるので、うまく対策を分けていくことが必要である。細胞・代謝・恒常性・遺伝子では苦手分野を作らないことが第一目標となる。
 合格を手に入れるには、まずは基本的な知識の定着が何よりも必要である。「書き込み生物サブノート」(旺文社)などノート形式のもので基本知識と作用機序をインプットして、「理系標準問題集」などで標準的な問題を定着させる。その後、実験考察の演習と過去問演習になる。実験考察は「CANPASS国公立標準問題集」〈駿台文庫〉から始まって「理系上級問題集」〈駿台文庫〉や「思考力問題精講」(旺文社)などにも手を付けられればよいのだが、そこまで手を付けるとオーバークオリティーになるので、よいタイミングで過去問に入るのが望ましいかもしれない。過去問は10年(2012年度以来)同じ傾向であるので、少し古いものも扱って十分に対策したい。
 実験考察は、問題文や表・グラフの見方から文中や表へのマーキングの仕方、発現の順序のメモ取りなど行うことは多い。そして、それらは他の人のものをそのままトレースできるわけではなく、自分用にカスタマイズする必要も生じる。実験考察の過程を生徒と一緒に板書できれいにまとめながら「自分だけの解法」を作り上げられるという意味では、個別指導は間違いなく最良の選択になる。