杏林大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
鍛治 彰均

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
小問集合
(分類、植物、発生、
血漿、バイオーム)
マーク式 やや易
小問集合
(体液組成、尿計算、脳、カルビン・ベンソン回路)
マーク式
&計算
標準
免疫、拒絶反応、
MHC
マーク式
&計算
標準
恒常性、ホルモン マーク式 標準

問題分析

  1. 計6問からなる小問集合で、いずれも基礎的な知識問題で構成されておりできればミスなしで通過したい。
  2. 計4問からなるが、大問Ⅰと比較しやや深い知識が要求される。 問1 ヒトの細胞外液のイオン組成についてのグラフから知識を引き出す問題。 問2 典型的な尿計算。濾過した血漿量を即座に原尿量と気付きたい。 問3 大脳新皮質の部位と機能についての知識問題。 問4 カルビン・ベンソン回路に関する詳細な知識を問う。特にATPとNADHの消費箇所の指摘は精度の高い知識が必要であり難問である。
  3. 免疫をテーマにした計5問からなり、前半2問は典型問題で後半3問は考察問題。MHCによる系統を踏まえ、自己と非自己を把握しながら文章内容を丁寧に読解する必要がある。与えられたグラフと文章内容を3、4回往復して培養液中の放射線量が培養日数に伴ってどういう経緯で変化するのかを導き出せるかで差がついたものと思われる。
  4. ホルモンと恒常性をテーマとした計4問からなり、グラフでの分析が必要な考察問題。ホルモンAはレプチンと考えられ、背景を知っていたり、演習経験がある場合は実験内容と与えられたグラフの分析がしやすく、差がつきやすい問題である。正常マウスと変異マウスとでどのような差異が発現していて、その差異がマウスの体重や血糖値にどう影響するかを見抜く力が必要である。HAR変異マウスではホルモンAの受容体の遺伝子に変異がある事から、負のフィードバック調節が効いておらず、ホルモンAの血中濃度が高くなっている。

総評

 杏林大学は知識型問題と考察型問題のバランスがよく、標準レベルの問題を中心に据え、良質な出題が多かった。理科2科目で100分という解答時間は短く、文章を読解しなければならない考察型の問題を如何に素早く解答できるかが鍵である。
 前半の大問2つは知識を問うており、日々の学習時に細胞、物質、現象についての固有名詞の定義や、生物にかかわる典型的なデータを記憶し安定的にアウトプットできる能力を養っておきたい。日頃から理解の曖昧な用語は定義に立ち返って理解・記憶し、参考書や資料集に掲載されているグラフや絵図の詳細まで目を通し記憶する心がけを持っていたい。アウトプットには杏林大学の過去問は勿論だが、東京医科大学の第1問の小問集合などの演習も適切と考える。
 後半の大問2つは実験考察型の出題であり、差がつきやすい。今年度の出題のみならず杏林大学では「正常」と「変異」を比較するタイプの実験が多い。まずは「正常」の定義や生理を徹底的に学び(本番ならば、把握し)、「正常でない」から結果がこのようになったという頭の働かせ方を訓練しておきたい。 その際、特にwhat/where/when/howつまり、「何が」「どの部位で」「どのタイミングで」「どのようにして」を追及して問題演習を重ねたい。杏林大学での問題説明文はそれらが比較的明確であり、正しく練習をしておくと正解を得やすいと言える。