慶應義塾大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて120分/問題数:大問3題
分析担当
太田 寛

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 細胞、タンパク質、細胞接着、
ギャップ結合、神経
記述式 標準
2 免疫、遺伝、遺伝子 記述式 標準
3 細胞性粘菌、生殖、生態 記述式 標準

問題分析

  1. タンパク質の生合成と細胞骨格の中でもギャップ結合に関する問題。タンパク質が一定量あるというところから、合成と分解が平衡になっている点に気づきたい。ギャップ結合は内径を通過できる分子であれば通過できるので、イオン等が通過すると膜電位変化が生じる。今回は神経細胞での電気シナプスというものだが、生体内では比較的様々な部分で用いられており、心臓でのギャップ結合の作用等で他大学でも出題されている。
  2. 問1~問5の免疫に関する問題は基礎知識確認程度。伴性遺伝の確率計算も基礎的なもので、遺伝子型が明確に確定する個人を見つけて、そこから遺伝子が遺伝する確率を求める。問10の遺伝子に関する問題は基礎的な内容。変異後のアミノ酸配列を「具体的に答えよ」とあるので、変異後のアミノ酸数がどのようになるのか具体的に数まで含めて答えたい。問11の論述については、タンパク質の配置と食作用の様子をしっかりイメージできるかが解答のポイント。
  3. おそらくⅢで差がついたと考えられる。問1と問2は基本問題ではあるが、問2の共生関係に関する論述は、問題演習に慣れていないと書きにくいかもしれない。襟鞭毛虫類に関しては2018年にも出題されているので、過去問を解いた受験生は容易だったであろう。問5のように研究テーマを考えて自由に論述させる問題は目新しい。明確な一対一対応の解答はなく、別解が多数存在する。Bの共生に関する実験問題は、実験とグラフをしっかりと読み解けば素直に解答が書ける。

総評

実質60分にしては分量が少々多いかもしれないが、描図問題もなく素直に読み取れるテーマが多い。実質易化といえる。しかし理由や読み取ったものの論述や、今回にいたっては実験に関する自由な論述も見られ、論述対策が十分にできていたかどうかが決め手となっている。自分が書いた論述が、どれだけの得点につながるのかがわかるような環境で学習を進められると非常に対策がしやすい。記述・論述で知識として問われているものは基本的な内容だが、知識をどのように運用するのかが重要であり、分野をまたがって問われることも多い。関連性を見つけ、普段から覚えるだけではなく、考えることに重点を置いた学習が必要となる。過去問や問題集での演習だけではなく、普段から資料集などで、実験や関連知識を確認し、興味をもって学習を進めてほしい。