慶應義塾大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて120分/問題数:大問3題
分析担当
匿名希望

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 メタンにおける製法・反応・圧力に
関する問題
記述式 やや易
2 原子量の定義、アボガドロ定数算出に関する誘導問題 記述式 標準
3 有機化合物の構造決定・分離操作 記述式 標準

問題分析

  1. エネルギー資源の1つであるメタンについての問題である。メタンの実験室的製法の化学反応式、臭素との置換反応、および、飽和蒸気圧を絡めた圧力について分かっていれば容易に解ける問題である。知識についてはどれも教科書レベルの基本的なものであるが、計算問題について、単に答えを出すだけに終始した勉強をしていた場合、2においてしっかりと記述できなかった可能性がある。
  2. 2018年に改訂された国際単位系の経緯を知っていれば、ある程度楽になった問題である。しかし、たとえ知らなくても、アボガドロ定数を用いて質量数12の炭素原子のモル質量を計算した際に、正確に12g/molにならないことを知っていれば、2については正解が得られる。3は結晶の密度、4の(1)は単分子膜からのアボガドロ定数の求め方、5はファラデーの法則の利用、とよくある典型的な問題である。また、4の(2)はオレイン酸の炭素間二重結合がシス型に屈曲しているためであること、6は微小なポリスチレンが水中でブラウン運動すること、と化学的性質についてしっかりと学べていれば解ける問題である。扱っている事実は受験生にとって真新しい事実であるが、各問いについては高校化学の内容を理解していればほぼ解ける問題である。
  3. 実験での実験器具の取り扱い方を絡めた有機化合物構造決定に関する総合問題である。構造決定についてはよくある問題であるため、正解できるはずである。2は平衡についての問題となるが、(2)の理由を除くと標準的な平衡定数の問題である。生成されるエステルの理論値は化学反応式から導き出せるため、与えられた平衡定数の値から実数値を求めることが出来れば収率はすぐに求められる。4は分液漏斗の使用法、5は芳香族化合物の分離についての基本問題である。

総評

ここ数年同様、難問と言えるレベルの問題は出題されていない。標準レベルの知識でも相当の正解が得られるだろう。逆に言えばミスが許されない問題ばかりである。気を引き締めて問題を解き、ミスを極力減らしていくことが必要となる。実験の問題が出題されたため、問題集だけに頼るのではなく、教科書や資料集など、図を参照しながら勉強していって欲しい。また、計算過程や理由などについては、採点者が読みやすいように書く練習もしておくこと。
易しくなったといえども、慶應義塾大学医学部であるため、受験生にとって標準レベルの問題は解けて当然である。まずは標準レベルの問題をミスなく解答できるようにした上で、発展問題レベルの問題も解けるように演習をしていただきたい。