順天堂大学
基本情報
試験時間:2教科120分/問題数:大問4題
分析担当
曽川 潤

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 小問集合
メタンハイドレート(気体の法則・化学反応の量的関係)
マーク式 やや易しい
2 理論:炭酸水素ナトリウムに関する溶解度・
気体の法則・化学反応の量的関係
マーク式 難しい
3 有機:アミロペクチンの枝分かれ、浸透圧 マーク式 易しい
有機:油脂の構造決定
(オゾン分解)
記述式 標準

問題分析

    1. 例年通り小問集合であった。小問数は9問と昨年の8問とほぼ変わらないものの、後半5問がメタンハイドレートに関連する繋がりのある小問であった。難易度は例年並み。メタンハイドレートについては関西医科2021年、 慶應義塾2019年、 筑波2019年等に出題されており、過去問演習などで扱った経験があれば、解きやすかったかもしれない。リード文の誘導に従えば、解答できたであろう。メタンハイドレートの5問は計算量がやや多いため、単純な処理力も求められた。
    2. 理論分野より、炭酸水素ナトリウムに関し、溶解度・溶液の濃度・気体の法則・化学反応の量的関係が複合的に問われた。問1は溶解度より飽和溶液のモル濃度を計算することが即座に着想できる。一方で、問2からは条件整理の段階から分かりにくく、一旦保留か捨て問と判断した受験生も多いのではないだろうか。本年度で最も難しい大問であった。解答の要点としては、未知数として初めの水の量、 炭酸水素ナトリウムの量、 生成するCO2・H2Oの量に注目し、溶解度と状態方程式から3式を立て連立することである。本学では解答時間に対して問題量が多いことが特徴であり、取るべき問題の選択が肝要である。この点を踏まえると、問2以降を保留することは全体での解答方針としては正解のひとつと言えよう。
    3. 有機分野より、典型応用問題であるアミロペクチンの枝分かれが問われた。私立医学部の頻出テーマであり、メディックTOMASの冬期医進特訓でも第11講で取り上げた。習熟度の差が如実に表れる問題であり、難易度も低いため、落とせない大問であった。解答時のポイントは2点であった。①デンプンの還元性についてヘミアセタール構造の有無まで整理し本質的に理解できていたか、②枝分かれの分析実験にて分解生成物の構造を解法の鍵として暗記できていたかである。
  1. 有機分野より、油脂の構造決定が出題された。問4までは条件から解答の方針が立てやすいものの、問5にて一旦手が止まる。実験2でのD~Iの構造と炭素数を丁寧に整理することが必要であった。問5が乗り越えられれば、問7まで一気呵成に解答できた。従って、投入する時間が確保できれば、私立医学部としては標準的な難易度であり、完答も目指せたであろう。

総評

 問題数は小問31問と昨年と変わらなかった。一方で、難易度は、Ⅰ‐3、Ⅱは私立医学部としては標準から典型応用のレベルであり、Ⅰ‐1の小問集合も昨年度より解きやすいことを考えると、昨年度よりもやや易化した。ただし、本学の解答の要点は、制限時間に対する問題量の多さにどのように対処するかであり、取るべき問題の選択と時間の使い方が肝要であることは変化しなかった。この点より、本学の化学の攻略をまとめると、高い基礎力と要領の良さが重要になる。従って、来年度に向けた対策としては、①典型・頻出問題への処理力を向上させる、②取るべき問題を見極め解答できるようにする、の2点が挙げられる。①については、「セミナー化学」など教科書傍用問題集であれば、どの問題にも解答できるようにしておくことがまずは重要である。その際、解法の丸暗記とならないように、原理からの本質的な理解が必須である。②については、本学の過去問演習が直接的な対策となる。ただ漫然と過去問を演習して丸付けするのではなく、制限時間内に取るべき問題を判断する訓練を積み重ねることが成功の鍵となる。