順天堂大学
基本情報
試験時間:理科2科目合わせて120分/問題数:大問2題
分析担当
勝亦 征太郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 ヒトの循環系
(器官、血管系、二酸化炭素の運搬)
マーク式
2 免疫
(免疫細胞、MHCと受容体、獲得免疫と二次応答)
マーク式 標準
3 原核生物の遺伝子発現調節
(オペロン説の概要、トリプトファンオペロン)
マーク式
個体群
(被食者と捕食者に関する個体数の推移)
記述式 やや難

問題分析

    1. ヒトの循環系に関する問題。器官や血管の位置と名称、血液循環の経路、組織で発生した二酸化炭素の放出のしくみについての知識問題であった。全て教科書に記載のある内容で、医学部受験としては平易なものといえる。図の中に記号が入り乱れているので、正答を出す時間よりも図の中の記号を探す方が時間を要したかもしれない。完答したいレベルである。
    2. 免疫に関する知識問題と考察問題。問1の穴埋めは全て教科書記載事項の知識なので完答したいところ。問2から問4は資料集(図説)レベルまでが必要な知識問題で、ここで差がついたものと思われる。問5はぜんそくを題材とした考察問題。レベルとしては標準的なもので、共通テストや高難度の考察問題ばかり演習してきた受験生は、グラフを選択する際に「これが答えで大丈夫だよね?」と逆に怪しんでしまったかもしれない。
    3. 原核生物の遺伝子発現調節に関する知識問題。教科書レベルの基本的な用語と現象の理解があれば問題はなかっただろう。リード文がそのままトリプトファンオペロンの概要となる部分があり、全ての問題で悩むことなくスイスイと完答できるレベル。ここでの取りこぼしは避けたいところ。
  1. この大問が当落線上にいる受験生の合否を決めた問題と言って良いだろう。数式・不等号や語句を穴埋めする形式のみであり、記述式の知識・計算問題というのが実態ではある。しかし数学を苦手とする生物受験生の多さからして、リード文にある見慣れない数式に気持ち負けしなかっただろうか。その後も様々な条件が記載され、問1でグラフの共存平衡点なる聞き慣れない点の座標を求め、問2ではその座標を使って軌跡まで求めさせる。だめだ、もう無理だ、今年の順天は超絶難化だ!と問題に降参してはいなかっただろうか。リード文内にあるグラフを見てもらいたい。横軸に被食者の個体数、縦軸に捕食者の個体数、4つの領域に分かれているこの形、どこかで見たことはないだろうか。そう、教科書にしっかり記載されている「被食者と捕食者の個体数変動のモデル、あの円のグラフか!」と気付いた受験生、おめでとう。あとはそのグラフを書き加えて、リード文とグラフを照らし合わせながら進めれば大きな問題はなかっただろう。問4と問5はほぼ知識問題なので、ここでの差はつかない。持っている知識とリード文の内容を融合することで正答できる、問1から問3で大きな差が付いたことだろう。

総評

 出題形式に大きな変更はなかったが、昨年度と比べ大問Ⅱの内容に怯んだ受験生は多かったと思われる。しかし表現が見慣れないだけで、必要な知識は教科書中心プラス資料集少々といったものであった。全体を通して問われているのは、「知識の精度と引き出しの多さ」であるが、それに加えて「経験のない事態に遭遇してもあっさり降参したり気持ち負けしたりせず、目の前の現実から手がかりを掴み既習の知識や経験を生かし正解に到達する力」も問われていた良問であった。
 教科書の内容を隅から隅まで完璧に理解し高い精度の知識を習得し、基本から試験本番のレベルまでの多様な演習を実施し、知識の引き出しの数を十分揃えること。その力を得るための日々を重ね、自分の力を信じ切れる状態で本番を迎えることが大切であろう。