千葉大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
竹内 純

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 酸化還元、反応速度 記述式 やや易
2 11族元素、電気分解、気体 記述式 標準
3 芳香族炭化水素、脂肪族化合物の異性体と合成法 記述式 やや難
4 合成高分子・分子量測定 記述式 標準

問題分析

  1. 中問Ⅰは過酸化水素水の酸化還元滴定、中問Ⅱは過酸化水素の分解反応の反応速度に関する出題であった。過酸化水素水の濃度や反応速度定数の算出はいずれも問題集などでよく取り扱われている標準的な題材で、手早く解き進めていきたい。問4の論述問題も標準的な内容だが、30字以内とやや少ない字数で答えるので、他の強酸では不適切な理由よりも硫酸が適切な理由を簡潔に述べる方が解答しやすいであろう。
  2. 銅、銀、金(11族元素)の内容を中心に、電気分解などの理論化学分野の内容も絡めた出題であった。電気分解の化学反応式の作成や反応量の計算は典型的な問題で、いずれも確実に解答したい。問4は塩素の溶解量を求める計算であるが、こちらも物質収支を考慮する気体の計量で、やはり標準的な内容である。一方、問2(2)と問5の論述問題はやや難度が高く、電圧が電気分解反応におよぼす影響や金の単体の特徴についての理解がなければ解答しにくい設問であった。
  3. 有機化合物の異性体に関する題材であるが、酸無水物の加水分解と構造決定、アセトアルデヒドの工業的製法など発展的な内容も多く盛り込まれている。問1~問2は、「アラミド繊維やアルキド樹脂の原料」という部分からヒントをつかむこともできるが、大筋では塩化アルミニウムを触媒としたベンゼンのアルキル化の知識、およびそれを前提とした収率の計算であり難度が高い。問4~問5も、標準的な問題集での演習だけでは経験することの少ない内容で、教科書以外からも幅広く知識を習得しておかなければ正解することは難しいと思われる。
  4. ポリエステル系合成高分子を主題とした大問であるが、問2では分子量測定についてやや詳細に問われている。(1)はU字管を用いた浸透圧の測定実験および計算で、問題集などでもしばしば取り上げられる内容であるため、習熟度が解答スピードに影響したであろう。一方、(2)の論述問題は経験がなくともポイントをつかみやすい設問といえる。問3以降はポリエステルの合成および加水分解に関する標準的な内容で、完答も狙える構成であった。

総評

 昨年度同様に大問4題の構成で、昨年度と比較すると理論化学分野中心の大問1・2はやや易化、有機化学中心の大問3・4はやや難化した。大問1・2においては、過程を記述する計算問題が2題と昨年度から半減した一方で、論述問題が3題と増加した。また、大問3では有機化学の用語や反応についての発展的な知識を問う設問、および典型問題の演習だけでは習得できない思考力を要する設問が出題され、例年並みの本学らしい傾向が見受けられた。
 上述の通り、近年の本学入試のおよそ6割は市販の問題集でも扱われるテーマを扱っており、習熟していた受験生には取り組みやすく感じられるであろう。本学をはじめとする国公立大医学部志望者は、市販問題集レベルの内容は目安として10月中までに習得しておくのがよい。その際、単に解くだけでなく、基本事項や問題解法、周辺知識などについて説明する練習を交え、論述問題対策も並行して進めていくと効果的である。そして、11月以降は本学以外の国公立大や難関私立医系大の過去問も用いて発展的な内容に触れ、計算過程の記述や論述問題の実践演習を行いながら、初めて見る内容にも対応できる応用力を鍛えていく必要がある。