


初夏の不調を考える
中学受験は大抵の場合、3年以上もの長い期間にわたって塾に通い準備をしていきます。子どもは小学校にも通っていますから、会社員で考えるならば、塾は「残業」または「副業」。オーバーワークで、しかも、長丁場の中です。体調を崩したり、受験に対する意欲が下がったりするのはむしろ当たり前にあることです。
特に「初夏」は心身共に不調に陥る季節ですので、保護者の皆さんには「そういうことがある」ということを知っておいてほしいなと思います。
特にこの時期、体力が必要な理由
まず第1に、気候に体が慣れていかないことがあります。梅雨が近づくにつれ、急に蒸し暑くなったり、気圧が変動したりと、大人であっても昨今の気候変動に順応するのは大変です。
さらに、この時期の学校では運動会の練習や各種行事が予定されていることも多いので、体力がいつも以上に必要というケースもあります。疲れやすい時期だということを念頭に置いて、ご家庭では体調管理にいっそう気を付けたいところです。
2番目としては、中学受験生の場合、どの学年であっても、GWを過ぎた頃から塾でのカリキュラムが速くなっていくことがあります。
例えば、5年生の算数では「旅人算」や「通過算」といった速さの単元学習が始まり、講義では次々と新しい単元を学んでいくのです。子どもによっては、理解しきれないまま、次々と新しく、しかも難しい問題が日々、押し寄せてくる状態となります。
塾によって違いはありますが、多くの塾では新6年生になる直前の5年生の2月で受験に必要な学習範囲を完了させます。そのため、5年生の授業はそれまでと比べてグッと難しくなり、初夏からは塾もスピード感を上げていきます。
6年生になると、これまで学んできたことを元に、入試に出題されるであろう問題演習に取り組むカリキュラムに移ります。つまり、基礎が理解できている前提で授業が進んでいくのです。
勉強は積み重ねなので、基礎の土台がしっかりしていない状態で、次々に新しい単元や応用問題を解くとなると「お手上げ」ということもなきにしもあらず。
基礎が理解できていないから、模試や塾での振り返りテストの点数も取れず、したがって偏差値も急降下になりやすいのです。こうなると、受験はしたい、塾はやめたくないという思いとは裏腹に、勉強に対するモチベーションがドンドンと低下していくようになります。
人間、成果が出ないものに対して、頑張り続けるというのは極めて難しく、「やらなければならない」という思いがあればあるほど、気持ちだけが焦るので、やがて、だるさなどの体調不良を訴えるケースは本当に多いのです。
子どもの「現状」を見直すチャンス
こういう場合、保護者は「頑張りが足らない!」と子どもに対して、叱咤激励しやすいのですが、これでは何の解決にもならないどころか、かえって逆効果だということをお伝えしたいと思います。
やるべきは、まずは、お子さんの様子を冷静に把握することです。
受験は体力勝負でもありますから、もし、体調不良であるならば、健康を取り戻すためにゆっくりと体を休ませないといけません。
土日も休めない、自由時間が全くないという状況であるならば、思い切って余暇時間を取ったほうが、受験へのモチベーションは回復しやすいです。
また、塾での宿題やプリントの量が多過ぎないかを見てみてください。
宿題はやればいいというものではなく、しっかりと自分で理解できているのかの判断材料に使うべきものです。例えば、丸暗記した答えで〇の答案を提出したとしても、子ども自身が理解できていないのであれば、受験本番には役に立たないでしょう。
それよりも、プリント類を取捨選択しながら、ここまでは解かる、ここからが怪しいという理解度の段階を子ども自身が把握することが大事です。
親が子どもに解説してもらいながら、その理解度をはかる方法もありますし、塾の先生に、子どもに合った勉強の進め方の相談をするのもよい方法です。
受験勉強は誤解を恐れずに言うならば「問題が解けた!」という喜びがあってこそ、続けられるものです。
まずは「わかった! 解けた!」という喜びを味わうことに意識を向けたほうが「やる気」が育ちます。
今の時期なら、6年生であっても、受験本番までには、まだまだ時間はたっぷりとあります。理解度が今一つだなと思う場合は、下の学年の問題に戻る、あるいはその単元の基礎問題を完璧にするなどといった対応で、この時期の不調を乗り越えていくことは十分に可能です。
逆に言えば「不調」は「現状」を見直すチャンス。睡眠時間も含めた生活リズムや勉強量、あるいは勉強のやり方などが、今の本人の状況に合っているのかを子どもと一緒に考えながら、軌道修正してみてくださいね。
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