おかあさんの参考書
「受験本番を前に、子どもへの言葉かけを考える」

「受験本番を前に、子どもへの言葉かけを考える」

鳥居りんこ

今年もあとわずか。年が明けると、いよいよ全国各地で中学受験の本番が始まります。親子にとっては緊張の日々でしょう。
毎年この時期に入ると、「わが子への言葉かけ」に関するご質問をいただくことが増えます。「合格させるための言葉を教えてください」といった感じです。

こう言えば間違いなく合格できる、魔法の言葉って?

お母さんの気持ちは痛いほどわかるので、私としては切なくなってしまいます。
「これを言えば間違いなく合格!」という魔法の言葉なんてない、ということくらいお母さんたちだってわかっているのです。

でも、これが「母心」なんだと思います。この子がお腹に宿った瞬間から、今の今まで、かたときも目を離さず、大切に育ててきたからこその切ない思い。
例えば、赤ちゃんのころに夜泣きで一睡もできない日々が続いたとか、急に高熱が出て慌てて救急外来に駆け込んだとか。子どもが今日も元気でいてくれるかどうかだけが気になって、自分のことは二の次三の次にしてしまったり。でも、子どもが笑顔を見せてくれるだけでうれしくて、それだけでパワーがみなぎって、「ヨシ! 今日も頑張るぞ!」と思えたり。そんな日々を繰り返してここまで歩んで来たお母さんばかりだと思います。

特に中学受験は、「王道ルート」からはそれた道です。お国が用意した「公立中学」という環境があるのに、わざわざ違うルートを行こうとするのは、いわば獣道のようなもの。舗装されていないから、歩くだけでも大変なことです。
「どうして好きこのんで、こんな道に来ちゃったのかな?」とか、「もしかして迷子になってない⁉」と泣きたくなる夜もあったことでしょう。

「口に出す」より「口に入れる」ことを考える

中学受験を子ども自身が決めたにせよ、親が誘導したにせよ、6年生のお母さんにとっては、これからの日々は心配がマックスになります。誕生から今まで、子どもの横で伴走してきたのに、この子はたったひとりで、誰の力も借りずに、受験会場という戦いの場に臨むのですから。
そんな中、どうにか助けてあげたい、何か自分にできることはないか? とお母さんが気を揉むのは当然のことです。

そんなお母さんたちの気持ちをわかったうえで、私は特別な言葉はいらないと思っています。あなたは「お母さんである」というだけで、大きな存在だからです。あえて言うなら、あなたがいつもどおりにしていることが最大の援護射撃になります。

過剰に「頑張れ! 頑張れ!」と鼓舞する必要もないし、ましてや「そんなことで受かるわけないでしょ?」という叱咤激励も不要です。
もし、心配のあまり何か口に出したくなったなら、ちょっと小休止してください。
口に出すのではなく、口に入れることを考えましょう。つまり、「今日は何を食べさせようかな?」に集中してみてください。

別に手作りの食べ物でなくてもいいのです。私などは「母の飯より、プロの飯!」という一大方針を貫き通しました。すでに子育ては完了していますが、特に問題らしきものは見当たりません(笑)。
そのあたりは各ご家庭の判断です。家族が「これ、美味しいね」と笑い合える空間ができるならば、何でもいいのです。

ほんとうの「魔法の言葉」とは

それでも、「何かアドバイスを!」と求められるならば、次のことをお伝えしようと思います。
「できれば、これからのひと月ちょっと、お母さんは『明るい占い師』でいてくださいね」と。

山あり谷ありの中学受験を乗り越えて中高一貫校に入り、その後精神科医になった、現在32歳の若者と一緒に本を作ったことがあります(参考:『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』双葉社)。
その彼が次のように言っていました。「脳は主語を理解できないという説がある」と。これを応用した言葉かけです。

簡単に解説しましょう。月を見てきれいだなと思ったときに、「きれいだ」とつぶやいたとします。このひと言を、脳は「月がきれい」なのか「自分がきれい」なのかを判断しない、ということです。
つまり、ポジティブな言葉を自分に聞かせれば、ハッピー度が上がっていくことになります。これこそがほんとうの「魔法の言葉」です。ぜひ、これを活用してみてください。

お子さんに何か言葉かけをしたいなら、明るい未来を予言する言葉にしてほしいのです。
例えば、
「お母さんは全く心配してないよ。なんたってわが家は本番に強い家系だからね」
「大丈夫! たかが入試。命を取られるわけじゃなし、ドーンと行こう!」
「君なら間違いなく受かるでしょ」
「終わったらあのテーマパーク行っちゃう?」
などというのもよいかもしれません。
あなたが今、自分にかけてもらいたいエールを口に出せば、それが一番です。あふれ出る応援の気持ちは、お子さんに必ず伝わります。

漆黒の大海原。出航前は誰もが不安です。でも、船出のときはもうすぐ。

ちょっと心配症で、ちょっと抜けていて、ちょっと涙もろくて、でも、最高に強くてやさしいお母さん。あなたがいるから、きっとお子さんは大丈夫。
時には怒ってしまうこともあるけれど、その笑顔で、いつもどおりのあなたで、これからの日々を全力で駆け抜けてくださいね。
ご武運を祈っています!

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

Youtube:鳥居りんこちゃんねる


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