


偏差値で測れない子どもの才能をどう見つけるかを考える
かれこれもう四半世紀ほど、中学受験を軸に教育業界や子育てに関する取材を重ねております。その中で思うのは、数字は罪な物になりやすいということです。
わが子が生まれた時に親はその誕生だけを心から喜んだはずなのに、いつの間にか周囲と比べだします。もちろん「生後何カ月では〇〇できる」「〇カ月では何㎏が標準」といった“スケール”が果たす役割は重要です。しかしいつのまにか、私たちは幼いわが子が数字上、平均以上にいるなら安心し、周りの子たちよりも発達が進んでいるならば密かに満足するという心持ちになりやすいものです。
この心情は「這えば立て、立てば歩めの親心」。わが子の成長を待ち望む純粋な喜びと共に「もっと先」を望んでしまう親の尽きない願望の現れですから、何か(数字やよその子)と比べて右往左往するのは、言い切るならば「親になったから」に他なりません。極論するなら、親とはそういうものではあります。
ただ、今まで数多くのご家庭を取材してきた経験から申し上げるならば、「数字」に必要以上に左右されないご家庭のほうが家庭内の雰囲気も良いですし、その子が長じて別家庭を築いたのちも、家族間の仲が良いなぁという印象を持っています。
さらに言うならば「親が、子どもである自分そのものを認めてくれた」とインタビューに答えてくれた人たちの自己肯定感は、相当高いという感触を得ています。
このある意味、自分の人生に満足度が高い方たちの偏差値がどうだったかといえば、それこそ千差万別。たまたま受けた模試の数字の上下、あるいは入学した学校の偏差値では、人生は決まらないというのが実感です。
それでも「中学受験」という戦いの現場では、模試の結果が返ってくるたびにため息をついてしまったり、「もっと頑張らないと」と焦る親は多いです。
もちろん、中学受験において、偏差値は志望校を選ぶための重要で客観的な指標です。しかし、偏差値という「たった一つのものさし」だけを見つめていると、その子の本当の強みや、将来を大きく伸ばす「隠れた才能」を見落としてしまうリスクがあるのもまた事実。
今回は、偏差値の数値だけでは測れない子どもの才能をどう見つけ、どう育んでいけばよいのかをご一緒に考えていきましょう。
偏差値に反映されない子どもの能力とは
ご承知のとおり、偏差値は「特定のテスト形式における、現時点での相対的な位置」を示す数字に過ぎません。受験で問われるペーパーテストの得点力は、子どもの持つ能力のほんの一部。以下のような能力は、一般的な偏差値にはほとんど反映されません。
- 粘り強さ、集中力(一つの課題に何時間も向き合える)
- 探究心、こだわり(疑問に思ったことをとことん調べ上げる)
- 空間認識、発想力(図形や構造を立体的に捉えたり、ユニークな視点を持つ)
- コミュニケーション、共感力(問題の意図や登場人物の感情を深く読み解く)
昨今はこれらの「偏差値には表れにくい力」こそ重要であるという国の方針により、今までの知識偏重型ではなく「課題を見つけ、自ら学び判断し行動する力」を重視する教育改革が実施されている最中です。そういう意味でも今後はより一層、大学受験を中心に「点数」そのものよりも、その得点における「プロセス」を重視する傾向が増してくるといえます。
子どもの才能は日常生活に現れている
では、テストの点数以外で、わが子の才能を見つけるにはどこに注目すればよいのでしょうか。ポイントは「勉強以外の日常生活での行動」にあります。
1)夢中でやっていることに着目する
日頃、子どもが夢中になって取り組んでいることをみてください。
- ブロックで複雑な作品を作り続ける
- 図鑑や地図をじっと眺めている
- 文章や絵を描くのが好き
- ゲームの攻略法を論理的に分析している
- 昆虫採集やお菓子作り、サッカー、電車など「大好き」だという趣味がある
「遊んでばかりで……」と片付けてしまわずに、「なぜこの子はこれに没頭できるのだろう?」と考えてみてください。そこには「集中力」や「構造理解力」といった才能が隠れています。
幼い頃から小学校高学年まで「泥団子」作りに熱心だった20代の青年は今、大手ゼネコンで都市開発をやっているのですが、原点は「泥団子」にあり、導かれるように土木工学科に進んだといいます。
「今、好きな仕事ができているのも、元はと言えば親が何も言わずに好きなだけ泥団子作りをさせてくれたから」だそうです。
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2)「自分なりの工夫」に耳を傾ける
決まった通りにやるだけでなく、「こうしたらもっと面白くなるのでは?」「別のやり方はないか?」と子どもが試行錯誤している姿に注目してみてください。既成概念にとらわれずアレンジを加える行動は「ロジカル思考」や「構築力」がある証拠です。
小学生の頃、市販のカードゲームで遊ぶたびに「このルールじゃつまらないから」と独自のルールを次々と考案して友達と遊んでいた子は、入った中高一貫校で「ボードゲーム同好会」を立ち上げました。彼は現在、IT企業でシステムの骨組みを作るエンジニアになっています。「条件を変えたら全体にどう影響するか」というプログラミング思考の原点がそこにあったのだと思われます。
その子の母は「私? 新しいルールが複雑すぎて『お母さんは昔のルールでやらせて』と言ってた」と笑っていますが、少なくとも「勝手なことをしないで」と制約をかけるような発言はしていなかったのでしょう。
3)「悔しがり方・喜び方」を見る
ゲーム、模試、試合などの結果が悪かったとき、泣いて悔しがるのか、冷静に自分のミスを分析しようとするのか。あるいは1点でも課題が解決したときには飛び跳ねて喜ぶのか。
感情の動きから、「負けず嫌い」「ロジカル思考」「達成感重視」など、その子を動かすエンジン(モチベーションの源泉)が見えてきます。
自他共に負けず嫌いを認めるある子は、スイミングスクールでの記録を伸ばすことに夢中で、6年生になっても中学受験には前向きにはなれなかったそうです。
しかし、地元公立中学の水泳部が廃部になったことを知るや、水泳部が強い中高一貫校に入学するべくギアが入り、見事合格。高校生になった今は全国大会出場を目指し、フル稼働だそうです。
その母の証言によると「子どもの時から目標が定まると競走馬になるタイプ(ゆえに、本人が納得した目標が必要)」とのことです。
これらはほんの一例です。漫画を読むのが好きすぎて編集者になった子、小学生の頃から機械の分解が好きでエンジニアになった子、 幼い頃からの動物好きが高じて、大手食品会社入社後に自ら企画提案をして高級ペットフードの開発を勝ち取った子など、様々な子たちの成長を見て来ましたが、好きなものがある人の人生は充実しているように感じますし、その子の親を見ると、わが子がその時々に夢中になっているものに対しては応援こそすれ、否定的な言動は一切してこなかった。さらに付け加えるならば、偏差値を求めるのではなく、その子に合った学校選びを最優先にしていたという共通点があると思います。
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わが子の才能を活かす受験勉強法を知る
とはいえ、このコラムをお読みの保護者の方にとっては、見つけた才能を中学受験の勉強にも活かしたいと考えるのではないでしょうか。実は、子どもの強みに合わせた「アプローチの工夫」は受験勉強にも有効です。
・こだわりが強い子
→興味を持った単元を深掘りさせ、得意科目(武器)を作る。
・発想力が豊かな子
→正解を急がせず、記述問題で自分の言葉で表現する楽しさを知ってもらう。あるいは立体図形の問題などでは、手を動かし試行錯誤したうえで正解に辿り着く喜びを知ってもらう。
・地道な継続が得意な子
→計算や漢字などの基礎固めを完璧にし、着実な得点源になっていることを見える化して、さらなるモチベーションにする。
「輝く才能の芽」を伝えることが一番の原動力に
中学受験は、時として数値という厳しい結果を突きつけられる場所です。だからこそ、一番近くにいる保護者だけは、「テストの数字」ではなく「子どもの成長の過程と可能性」を見つめてあげてほしいと願っています。
時はAI時代。AI時代は個人の力がシビアに問われる時代とも言われますが、自分の「好き!」や専門性を発揮して輝ける、ワクワクする時代でもあると思います。
「君にはこんな素晴らしいところがある」「ここにすごい才能の芽がある」など、 その一言と温かいまなざしが、子どもの自己肯定感を育て、受験、さらには人生の大きな試練を乗り越える一番の原動力になります。
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