医学部入試問題分析

昭和大学 【2025年度 化学】

昭和大学 【2025年度 化学】

基本情報試験時間:2科目140分/問題数:大問4題
分析担当戸来 又四郎
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
1 タンパク質(高次構造、確認試験、食品中の含有率) 記述式 標準
2 ベンゼン環を有するエステル化合物の推定 記述式 標準
3 陽イオン交換樹脂(構造式、スルホ化の割合、イオン反応式、イオンの定量) 記述式 標準
4 小問集合(水上置換、ダニエル電池、圧平衡定数、混合物の定量、結晶格子) 記述式 やや易
問題分析
  1. タンパク質に関する総合問題。タンパク質の高次構造についての空所補充(知識問題)が9箇所、ポリペプチド鎖の立体構造についての描図が2題、タンパク質の定性反応に関する知識問題が3題、食品中の窒素の定量(ケルダール法)の計算問題1題で構成されている。知識問題に関しては標準的な難易度であるが、穴埋めに適する語句の候補が複数あり、試薬名の記述にしてもどこまで正確に書く必要があるのか戸惑った受験生が多かったのではないか。描図の1)はα-ヘリックスのらせん一巻きが3.6残基であり、アミノ基が4残基離れたカルボキシ基と水素結合することを知っていなければ解けない難問である(ただし、同テーマが2014年度にも出題されている)。2)はおそらく多くの医学部受験生が解いた経験のある、市販の難関大受験用問題集に掲載されている問題の類題レベルである。問4の計算問題は入試頻出の逆滴定の応用テーマでしっかり得点しておきたい。
  2. ベンゼン環を含む分子式C8H8O2およびC9H10O2のエステルに関する総合問題で昨年度の大問1と同じテーマ。異性体数の空所補充(数値)が3箇所、定性反応の知識問題が3題、構造式決定に関する問題が2題。分子式C8H8O2のエステルについては構成カルボン酸と構成アルコールの炭素数の和に注目すれば手早く構造異性体の全体像を捉えられる、C9H10O2のエステルについてはC8H8O2の構造異性体であるギ酸ベンジルにメチル基をつけた構造が不斉炭素原子を持つ唯一の構造である、といった情報処理ができれば速い。定性反応の知識についても昨年度と同じく基本的なことが問われているが、化学構造の記述に関してはすべてと指定されない場面でも複数書くのか、液性を考慮するのかなど、どこまで正確に書く必要があるのか悩んだ受験生は多いだろう。
  3. イオン交換樹脂に関する典型問題。陽イオン交換樹脂の機能に関する空所補充が3箇所、構造式、イオン反応式を書く問題が各1題、計算問題が2題で構成。全体的に教科書傍用問題集レベルのテーマといえるが、構造式およびイオン反応式を正確に書ききれること、スルホ化の割合を手早く求めることがやや難しいと推測されるので標準レベルとした。構造式はジビニルベンゼン単位の表記、イオン反応式はカルシウムイオンを吸着したイオン交換樹脂の表記に注意を要する。スルホ化の割合計算に関しては、割合と重合度の2つを文字で置き、質量変化について立式するのが一般的な解法なのだろうが、やや煩雑になるのでセルロースやビニロンの反応割合の問題と併せて数直線による反応割合・単位式量・質量の比例計算の解法を身に付けておくのもよい。
  4. 理論計算の小問集合。例年通り別テーマ5題で構成されている。問1は水上置換による気体捕集量を状態方程式で求める典型問題だが、水蒸気圧の補正に加えて液柱圧の補正も加わり、計算がかなり煩雑になる。問2のダニエル電池の電解液濃度、問4の炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物の定量、問5の金属結晶の原子量計算については教科書傍用問題集レベル。使用するデータと使用しないデータの見分けには注意したい。問3の二酸化硫黄と三酸化硫黄の気相平衡の圧平衡定数を求める問題は、物質量の増減あるいは分圧の増減を反応式で追い、圧平衡定数の定義式に代入すればよい基本的な内容。どちらの単位で変化量を追うにせよ、丁寧かつ慎重に処理する必要があるが、煩雑というほどではない。問1以外の4題は手早く確実に得点したい。
総評
昨年出題されなかった天然高分子分野から予想通りアミノ酸が1題出題され、合成高分子分野からイオン交換樹脂が1題出題された。さらに有機分野からは昨年と同テーマの芳香族エステル関連の問題が1題され、本学の特徴である有機・高分子分野からの出題率が高い内容となった。残りは小問集合1題であり、大問計4題の構成は過去5年と同じであり、昨年に引き続き、理論化学に関しては頻出の電離平衡、浸透圧が出題されず、難問も無かった。昨年同様易しいレベルに落ち着き、受験層を考えると今年度も高得点勝負になったことが予想され、有機分野および高分子分野の出題率が7割以上と有機化学を得意としている受験生にとって非常に有利な構成であった。来年度に向けては、知識問題(記述)の出題傾向を踏まえつつ、電離平衡や浸透圧など差のつく理論分野まで過去問の類題に対応できる力を養っておきたい。

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