
医学部入試問題分析

杏林大学 【2025年度 生物】
基本情報試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当鍛治 彰均
分析担当鍛治 彰均
出題内容・難易度
| 大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
| Ⅰ | 小問集合 (微生物、代謝、ホルモン、受精、転写、進化) |
マーク式 | 易 |
| Ⅱ | 中問集合 (生存曲線、ミクロメーター、光合成、染色体と分裂) |
マーク式&計算 | 標準 |
| Ⅲ | 神経 (膜電位、イオンチャンネル、シナプス後電位) |
マーク式 | やや易 |
| Ⅳ | タンパク質 (タンパク質の構造、酵素反応) |
マーク式 | 標準 |
問題分析
Ⅰ. 計9問からなる小問集合で、いずれもごく基礎的な知識問題で構成されており、全て正解したい。問1,2,9は細菌類、菌類など微生物からの出題であり注目しておきたい。
Ⅱ. 計4問からなる中問集合で、典型題で構成されている。問1は生存曲線の知識問題で平易。問2はミクロメーターと顕微鏡の使い方についての典型題で、接眼ミクロメーターの1目盛を正しく確定させて対応していける。問3は光合成の典型題で、光化学系やカルビン・ベンソン回路の部位についての知識、光合成の反応式を用いたmol計算などいずれも平易な出題である。問4は体細胞分裂に伴う遺伝子の振る舞いについての分析問題でやや差がつくレベルである。⑴で与えられた表の中で胚の発生が分裂中期で停止している交配のパターンを見ると、メス親がaaの時と気付ける。このことからX遺伝子座に存在しているのは母性効果遺伝子と分かる。それを踏まえて⑷の交配5において生じる個体のうち、aaのメス個体が親になる場合、次の世代の個体が体細胞分裂中期で停止する個体と分かる。
Ⅲ. 計6問からなり、ニューロン上に存在する様々なイオンチャンネルと膜電位の関係を分析する標準問題で構成されている。問1は知識問題。問2は活動電位が発現している時のイオンチャンネルの動態であり、電位依存性ナトリウムイオンチャンネル、電位非依存性カリウムイオンチャンネルともに開いている③を選ぶ。問3は伝導の方向が図1の左から右方向である事とP1部位は不応期である事に注意したい。問4では細胞外液のナトリウムイオン濃度を減少させた事が活動電位の大きさの減少にのみ寄与する事を見抜く。問5は不適切な説明を選ぶ事に注意し、時間t1からt2の間は活動電位発現期間である事を踏まえて、静止電位の説明である ②を選ぶ。問6は空間的加重と気付き、シナプス前細胞AとBのEPSPが加重され、閾値を越えればよいと考える。
Ⅳ. 計2問からなるタンパク質、酵素反応についての出題で前半は知識問題、後半は阻害薬を用いた考察問題であり後半で差がつきやすい。問1ではタンパク質立体構造のうちの二次構造の基礎的な知識で解決できる。問2では問題文中の「阻害薬はいずれも基質Sとよく似た構造を持ち、タンパク質Xの活性部位に結合することによって酵素の働きを阻害する」事を把握して競争的阻害である事を踏まえて⑴⑵を分析する。⑶では表1のICの値に注意し、この値が小さいほど細胞増殖を抑制する能力が強いと判断でき④を選べる。⑷では主作用として抗菌能力の高いものかつ副作用としてヒトのタンパク質Xの阻害効果が低い阻害薬Bを選べる。
総評
本年度も大問4題で知識型問題と考察型問題がバランス良く配置され、基礎から標準レベルの問題中心の構成。例年より平易で合格に必要な点数はかなり高いと考えられる。前半の大問2題のような基礎的な出題への対応として、教科書や市販の参考書に出てくる生命現象、細胞、物質などの固有名詞の定義を厳密に記憶し、セミナーやエクセルなどの教科書傍用問題集で何度もアウトプットし、素早く正解できるよう訓練しておきたい。さらに杏林大学では毎年、教科書に掲載されている絵図やグラフやモデルなどが必ず出題されるので、日々の学習の中でこれらの絵図の理解と記憶の意識づけを持つ必要がある。また、後半の大問2題に見られるような実験考察系問題への対処としては、説明文の中で必ず「正常」「野生型」が定義されているので、こうした定義や設定を正しく把握すること。そして「異常」「変異型」「阻害」が引き起こす結果を「正常」と比較してその理由や機序を分析する訓練を豊富に積んでおきたい。また、実験結果の文章とグラフを往復しながら、「このグラフから何が言えるかな」と考察する経験も意識して学習を進めて欲しい。具体的な対策として、杏林大学の過去問はもちろんとして、北里大学や東京医科大学の過去問にある実験考察系問題の演習も有効と考える。その際、自分の理解や把握の曖昧さを排除する厳密性、仮説を立てる勇気と、その仮説を否定/肯定していく論理能力を養っておきたい。
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