医学部入試問題分析

日本医科大学 【2025年度 化学】

日本医科大学 【2025年度 化学】

基本情報試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当竹内 純
出題内容・難易度
大問 出題内容 出題形式 難易度
周期律・物質の分離法・溶液の濃度 記述式 やや易
アンモニア生成反応の反応熱・化学平衡 記述式 標準
脂肪族化合物の異性体、有機ハロゲン化合物と麻酔薬 記述式 やや易
グルコース・デンプン 記述式 標準
問題分析
Ⅰ. 問1がイオン化エネルギーや原子半径などの周期律に関する空欄補充問題、問3が質量パーセント濃度とモル濃度の換算や溶液の希釈に関する計算問題で、これらは確実に正答したい。一方、問2は物質の分離法である再結晶についての論述問題で、習熟度が影響したと思われる。⑵のような、必要な操作を自分で考案し説明する形式の論述問題は、本学入試においては目新しい。
Ⅱ. 窒素と水素からアンモニアを得る反応を題材に、結合エネルギーと反応熱、圧平衡定数とその利用、平衡の移動について問われた。圧平衡定数およびそれを利用する計算問題まで(問1)は空欄補充形式で、いずれも典型的な内容である。問2・問3はグラフを描く問題で、平衡の移動方向の判定に加え反応速度の考慮も必要となる。
Ⅲ. 酸素原子を1個含む鎖式飽和化合物、および麻酔薬として用いられる有機ハロゲン化合物の構造の決定が中心の設問であった。炭素数が3または4のアルコール・エーテルの構造異性体は基本的な内容なので、化合物A・B・Cはいずれも素早く特定したい。麻酔薬の構造も、不斉炭素原子などの条件を適切に考慮していけばスムーズに決定できる。問1・問9では沸点の高低を判定する論述問題が出題されたが、ある程度以上の演習経験を積んできた受験生には容易であろう。
Ⅳ. グルコースの性質とデンプンの構造に関する標準的な出題であった。問6は知識事項としてはやや発展的だが、文章中の記述からヒントを得ることも可能である。米に含まれるデンプンの組成や、シクロデキストリンの利用法(問9)も同様にやや発展的な知識を要するが、その他の設問は基本的・典型的なもので確実に正答したい。
総評
例年同様に大問4題構成で、論述問題の数は昨年と同程度であったが、知識問題や計算問題に典型的なものが多かったため、全体としての難易度は昨年よりも易化した。論述・計算問題の解答スピードや、正確な知識とミスのない計算で確実に正答できたかどうかが分かれ目になったであろう。
近年の本学入試では、発展的な題材や複雑な状況設定、手間のかかる計算問題が減少し、典型的なテーマや設問が増加している。その分、論述問題や描図問題が重視されるようになり、教科書の基礎事項や典型問題を深掘りした学習を行ってきたかが問われるように変化している。また、本年の大問[Ⅲ]の各種麻酔薬や、一昨年の大問[Ⅳ]のプレガバリンなどのように見慣れない有機化合物が出題されやすいことも特徴であるが、直近の年度で出題されたものは条件の指定や誘導があり、十分に解答可能な問題設計となっている。
本学入試対策にあたっては、すべての単元の典型的・標準的な問題の解答スピードを向上させ、問題文を読めばすぐに反応できるようにしていくことが必須である。さらに論述問題対策を見据えて、単に出された問題に解答するだけでなく、解法の流れや根拠となる基本事項について文章で説明するような演習や、さまざまな物質の性質、実験操作の目的や起きている現象などについて考察するような演習が必要となる。実際の論述問題を演習する際は、私立医系大学の過去問だけではあまり分量が多くないので、必要に応じて国公立大学の過去問なども用いるとよい。

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