
医学部入試問題分析

東京慈恵会医科大学 【2025年度 化学】
基本情報試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当竹内 純
分析担当竹内 純
出題内容・難易度
| 大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
| 1 | 原子の構造と同位体、放射性同位体の半減期 | 記述式 | やや易 |
| 2 | 多糖の透析・抽出・分液の実験、溶液の凝固点降下、生成エンタルピー | 記述式 | 標準 |
| 3 | 芳香族炭化水素の決定、フタロシアニン、電離平衡 | 記述式 | 標準 |
問題分析
- 原子の構造や周期表に関する空欄補充(問1)は基本的な内容で、確実に正答したい。問5の「仮想世界」についての思考問題も入試においてしばしば出題されるテーマで、現実世界と異なるのは水素の同位体の存在比のみであるため比較的容易である。問2の原子の質量に関する問題は、原子物理の知識があればより理解しやすい。問3~問4は放射性同位体の半減期についての計算問題で、2種類の放射性原子のうちどちらを主に考慮すればよいかに注意する必要がある。
- 多糖や脂肪酸など、さまざまな物質を用いた透析・抽出・分液の実験を題材とする総合問題であった。問1の分子の極性の判定、問2(ⅲ)の浸透圧の計算、問4の凝固点降下の計算、問6(ⅱ)の生成エンタルピーの計算は本文の実験を考慮せずとも解答できる標準的なものである。一方、その他の設問を正答できるかどうかは、物質の性質の知識を十分に活用し、実験の流れや操作の結果を適切に想像できるかにかかっている。本文だけを読みながら想像していくのはやや難しいので、下線部に差し掛かる頃合いで各設問にも目を通しながら読み進めるのがよい。
- 中問Ⅰは芳香族炭化水素とその酸化生成物を決定する問題で、分子量の値や水素と反応しないという条件から適切に構造を考えられるかがポイントとなる。中問Ⅱでは大環状の多座配位子であるフタロシアニンが出題された。問5のような、見慣れない化合物の異性体の個数を数え上げる設問は本学入試らしいものであった。中問Ⅲのフェニルホスホン酸の電離平衡に関する計算問題では、電離度を厳密に求める演習経験の有無が分かれ目になったであろう。
総評
大問は昨年と同数の3題で、おおまかに大問1が理論分野、大問3が有機分野、大問2が理論・有機の混合問題であることも昨年と同様であった。一方、問題構成は例年と大きく異なり、論述問題がなく計算問題も平易であった。本学の化学の入試問題では、昨年度の大問2のローソン試薬や、一昨年度の大問4のテルミサルタンの合成法のように、教科書などに記載のない題材について、与えられた情報やデータを理解し活用する問題が出題されやすい。この点に関しても、本年度のフタロシアニンの設問はその性質などについて直接問うものではなく、やはり取り組みやすいものであった。大問2こそ、実験操作による分子構造の変化や物質の移動などに対する想像力が求められる難関国公立大のような出題であったが、他の2つの大問は分量も多くなく、難易度はかなり易化したといえる。
本年度のような出題傾向が次年度も継続されるのかは不明だが、昨年度までと同様に受験生の大半が経験のない題材が出題されるとすれば、難関国公立大の過去問なども併用して手広く対策する必要があるため難しい。しかしながら、直近の年度では正しく内容を理解することができれば比較的取り組みやすいものになっている。受験生においては、問題集で扱われている計算問題に習熟しておくのはもちろんのこと、論述問題対策としてその背景となる基礎事項について説明できるようにしておくことが望ましい。さらに、実験操作およびその結果に関する理解・論述も頻出であるので、操作の目的・理由やその結果について読解し考察する習慣をつけておくことも必要である。
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