東京医科歯科大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:大問1題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

設問 出題内容 出題形式 難易度
3 内容一致(True or False Question:
選択肢24個)
選択式 標準
4 英問英答
(3問:10~25 words)
記述式 やや難
5 下線部和訳
(2問)
記述式
6 論旨要約
(1問:400字以内)
記述式

問題分析

  1. 本文のパラグラフ展開と基本的に一致する形で選択肢が配列されている。また, 本文がかなり長いので, よほどの速読力がない限りは, 本文を通読してから選択肢の真偽を一挙に判定するよりは, パラグラフ毎に判定していく方が望ましい。本問の特徴は, 第6問が大局的な理解力を求めているのに対し, 精読的な理解力を求めているところにある。特に解法としては, 「否定と肯定とのすり替え(例えば, 本文が肯定文で選択肢が否定文である場合)」や「語句のすり替え(本文中の語句を選択肢で他の語句に替えている場合)」などに気を付けたい。特に年度や人名などの固有名詞はよくすり替えられる。配点は48点[各2点×24](40%)ほどであろう。
  2. 本文の内容を前提として答えるので, 単純な課題英作文ではない。「論文で提示された情報に基づいて」, また「自分自身の言葉を使って」と条件付けられている様に, 本文の内容を捉えた客観的な記述力が必要である。なお, この問題の設問文を先に読んでおけば, 本文の鳥瞰図が得られる。さほど長い記述は求められていないので, 配点は18点[各6点×3](15.0%)ほどであろう。
  3. 難解な語句や構文はない。本年度も含めてこの数年, 語句や構文に難解なものは出題されていない。そうであるが故に, 全体の内容を捉えた自然な日本語訳が求められる。とは言え, この程度の問題なら, 配点は12点[各6点×2](10.0%)ほどであろう。
  4. この論旨要約問題には、本文全体の「テーマ」と3つの「キーワード」が与えられている。その意味では, 本学の問題を効果的に解くためには, 第4問と共にこの第6問の設問文を読んで, 全体の論旨を念頭に置いてから本文を読み始めるのがよい。また, 答案作成の練習のために, 本学の過去問はもちろん, 他大学の問題を含めて, 400字以内にまとめることを日常的にしておくことが必要である。特に, それを書いただけで満足せずに, 講師に添削してもらうのが望ましい。英作文と同様に, 要約のスキルも指導を受けてこそ伸びるものである。配点は42点(35%)ほどであろう。

総評

 例年通りの出題で, 大問4題(第3~6問[第1・2問は他学科用]), 120点満点で構成されている。英文のテーマは「電子レンジで食品を調理する際に生じるリスク」についてである。なお, 語数は約1,900語で, 昨年度とほぼ同じである。放射線による健康被害は医学部に限っても, 関西医科大(2015), 慶應大(2008), 埼玉医科大(2007), 東京医科大(2018), 東邦大(2012, 2008), 日本医科大(2010), 愛媛大(2014), 高知大(2019), 札幌医科大(2017), 浜松医科大(2017), 防衛医科大(2019)で出題されている。しかし, 電子レンジによる健康被害は, 入試では初めである。もっとも, 本学では医療系英文はしばしば出題されている。「朝食が人体に及ぼす影響」(2020), 「有史以前のがんの発生率」(2019), 「災害医療」(2018), 「塩分摂取が人体に及ぼす影響」(2015)がそれである。その意味では, 医療系分野の教養的知識も併せ持ちたい。ただし, 英文そのものは読みにくいものではなく, また設問の難易度も第6問の要約問題を除けば全般的に標準的である。とは言え, 総語数が多いので, 速読はもとより多読的訓練が必要である。要は, このレベルになれば, 逐語的に日本語に置き換えるのではなく, 述べられていることを全体として捉えていかなければならない。不明語句があっても辞書を引く作業を意識的にしないで, 前後の脈絡から推測しながら読み進めるのである。以上を総じて, 本年度の東京医科歯科大の問題は想定内の出題であったと言える。