東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:60分/問題数:大問3題
分析担当
渡邉 哲史

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 【長文読解】空所適語選択・内容一致文選択 選択 標準
2 【長文読解】空所適語句選択・
文補充(英作文)
選択・記述 標準
3 【長文読解】同義語選択・内容一致文選択・
本文をふまえての意見文作成
選択・記述

問題分析

  1. 〔文章題材〕コレラの原因解明とそれに尽力したJohn Snow 約680words
    文中の下線部と同じ意味の語を選択する問題が無くなり、空所適語選択6問、内容一致文選択6問の2パターン構成となった。本文は、時系列に沿って出来事を淡々と紹介していく説明文型であり、各段落のメイントピックが明確であることから、ほとんどの受験生が内容把握そのものには苦戦しなかったであろう。適語選択問題では、難しい語句が選択肢に含まれているものもあり、完答は難しい。内容一致文選択で取り切ることが出来たかどうかが勝負どころとなる。
  2. 〔文章題材〕以前交流があった人との再交流がもたらすメリット 約460words
    昨年度は適語句補充問題が10問出題されたが、本年度は4問に減少。代わりに文中の空所部分に文脈に合うように適文を書く英作文問題が1問出題された。英作文があるとはいえ計5問という問題数である。適文補充は第1段落にあるが、1段落だけでは語彙レベルや文章の難度が高く把握しにくい。第2段落での「現在交流のある人よりも、今は疎遠だがかつて交流のあった人との交流の方が価値あり」、第3段落での「情報共有出来ていない人との交流により新しい発想が得られる」という主旨をふまえることで全体のストーリーが見えてくる。部分的に語彙レベルの高さに苦戦しても、段落全体や文章全体の論旨を考えることで対応できる。
  3. 〔文章題材〕sunk cost fallacy 約680words
    これ以上メリットが生じないとわかっていても、これまでにかけた多くの労力を思うと、止める・切り替えることが難しい。人々が陥りやすいこの状態について具体例を挙げて説明し、その要因と解決策を述べている文章。1文1文が非常に読みやすく文章としての展開も分かりやすい。大問1とは異なり、適語選択問題の選択肢には難語が含まれていない。内容一致文選択は論旨をストレートに問うものであり、選択肢の文を正確に把握できれば判断は容易。問6の英作文問題のために時間を残すことが出来る文章レベル・設問レベルであった。

総評

 適語補充、下線部同義語選択問題が減少し、昨年度は1問だけであった英作文問題が2020年と同じパターンでの2問出題。細部の分析を問うものよりも全体の内容把握重視の問題が増えた。語彙レベルの高さが特徴とされやすいが、部分的に分からない語彙があっても段落主旨や全体テーマを把握することで十分に理解出来る。単に直訳していくだけの読み方になっていると苦戦してしまう。文章の読み方、分析の仕方を習得することが重要となる。一方で、選択肢の文章が、本文で用いられている語句を含み紛らわしく作られている。選択肢の文を単語ベースで分析してしまうとダミー選択肢に引っかかりやすい。加えて、似ている選択肢が複数残ったときに、相対的な違いや特徴を明確にする視点を持つことが出来ているかが問われる。本文の主旨把握が出来たはずなのに、得点をのばせなかった受験生も多いと思われる。1文を正確にとらえる精読力と、段落の主旨・文章全体の主旨をとらえる読み方の両方を高いレベルに仕上げていく必要がある。「訳す」ことは手段であり、「分析する」「把握する」ことを目的として英文や設問と向き合うことが重要である。