杏林大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
鍛治 彰均

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
小問集合
(ゲノム、神経、細胞膜、
オルガネラ、生態系、受精)
マーク式
小問集合
(眼、生態系のエネルギー収支、発生)
マーク式 標準
遺伝の法則と染色体、
配偶行動とホルモン
マーク式
&計算
標準〜やや難
聴覚と神経 マーク式 やや易〜標準

問題分析

  1. 計7問からなる小問集合で、いずれもごく基礎的な知識問題で構成されており、全て正解したい。
  2. 計7問からなる。問1 は眼に関する知識問題で、教科書に掲載されている図で解決できる。(3)では網膜に存在する細胞の位置関係の知識が必要である。問2は生態系におけるエネルギー収支に関する問題で、与えられている模式図と問われている数式はいずれも教科書で定義されており、平易である。問3はショウジョウバエ胚における前後軸の決定と母性因子との関係についての問題。ビコイドやナノスの固有名詞とその機能を理解しているに越したことはないが、説明文に従いグラフを分析すれば正解に至れる。
  3. 前半問1はメンデル遺伝を主題とした3問、後半問2はメダカの配偶行動とホルモンの関係を分析する考察問題。差がつきやすい問題群と考える。問1の (1)、(2) では3種類の対立遺伝子を扱うが、連鎖の状況や組換え価も明記されており、典型的な思考で解決できる。(3)では、減数分裂に伴って染色体がどのように振る舞うのか図を描きながら把握する際、動原体の位置と遺伝子の位置関係を判断する能力が問われており、やや難しい。問2はメダカの配偶行動とホルモンの関係を主題とした問題で、 問題文の正しい読解と表で示された実験結果の緻密な分析能力が必要な問題。ホルモン分泌の有無と受容体の有無によって配偶行動にバリエーションが生じ、複雑に思えるが、野生型のオス/メスを分析・比較の基準として丁寧に思考していきたい。
  4. 聴覚と神経に関する5問からなる。問1、問2は耳の構造についての知識問題。問3、問4、問5は聴神経の興奮や閾値に関するグラフ分析だが、複雑なものではないので取り組みやすい。

総評

 本年度も大問4つで知識型問題と考察型問題がバランス良く配置され、基礎から標準レベルの問題を中心に構成されており、取り組みやすいセットであった。ただ、理科2科目で100分という解答時間は決して余裕のあるものではなく、Ⅲのような問題文と表の把握に時間がかかる問題で、いかに素早く解答できたかが鍵となる。
 前半大問2つのような基礎的な出題への対応として、教科書や市販の参考書に出てくる生命現象、細胞、物質などの固有名詞の定義を厳密に記憶し、セミナーやエクセルなどの教科書傍用問題集で何度もアウトプットし、素早く正解できるよう訓練しておきたい。さらに杏林大学では毎年、教科書に掲載されている絵図やグラフやモデルなどが必ず出題されるので、日々の学習の中でこれらの絵図の理解と記憶の意識づけを持つ必要がある。
 また、後半の大問2つに見られるような実験考察系の問題への対処としては、説明文の中で必ず「正常」「野生型」が定義されているので、こうした定義や設定を正しく把握して「異常」「変異型」「阻害」が引き起こす結果を比較するための基準、軸足として強く意識して考察を進める訓練を豊富に積んでおきたい。具体的な対策として、杏林大学の過去問はもちろんとして、北里大学や東京医科大学の過去問にある実験考察系問題の演習も有効と考える。その際、自分の理解や把握の曖昧さを排除する厳密性、仮説を立てる勇気と、その仮説を否定/肯定していくしなやかな論理能力を養っておきたい。