慶應義塾大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:4題
試験時間:90分/問題数:4題
分析担当
小出 信夫
小出 信夫
出題内容・難易度
大問 | 出題内容 | 出題形式 | 難易度 |
---|---|---|---|
1 | 読解(総合問題:10問) | 記述式 | 標準 |
2 | 読解(総合問題:24問) | 選択式と 記述式 |
やや難 |
3 | 読解(総合問題:20問) | 選択式と 記述式 |
標準 |
4 | 英作文(課題型:1問) | 記述式 | やや難 |
問題分析
- 「食品ロス」に関する英文で、約650語。配点比率は30%ほどであろう。食品流通における京都市の取り組みである「3分の1ルール」を引き合いに出しながら、観光業だけでなく環境問題でも同市が規範となるべきであることを説いている。設問は空所補充(動詞の語形変化型)、整序英作文、下線部英訳、和訳、内容説明などの記述式で構成されている。内容説明問題は2問出され、どちらも75字以内という条件がついている。総じて英文は読みやすく、また設問も解きやすい。なお、「食品ロス」に関しては群馬大(医:英語小論文)2015の問題が参考になる。
- いわゆる「トロッコ問題」を前提として、それを自動運転車との関係で説いた英文で、約800語。配点比率は30%ほどであろう。事故発生が予測される際の「人倫的判断」と「功利主義的判断」とを人間と機械とを対比しながら説き、自動運転になってもなお倫理的判断が必要であることを主張する論稿である。なお、設問には空所補充や下線部和訳の他に、慶應特有の内容一致問題が含まれている。これは一致・不一致以外に「本文からは読み取れないもの」を選ばせる問題である。これには過去問演習を繰り返すことで対処する必要がある。なお、「トロッコ問題」については福島県立医科大2008や岐阜大(医)2011の問題、またそれと自動運転車との関係は慶應大(環境情報)2017の問題が参考になる。
- 「睡眠不足が健康と生産性に及ぼす影響」についての論説で、約700語。配点比率は25%ほどであろう。他の読解問題に比べて選択系の問題が多く、また設問が英問形式であることは例年と同じである。睡眠不足に関する話題は「睡眠負債」という概念として入試頻出なので、内容的に難はない。また設問も同義語への書き換えや前置詞の選択、文の空所補充など比較的解きやすい。ただし、内容一致問題は大問2と同じ形式で出題されているので、本問はこれへの対処が鍵となるだろう。なお、「睡眠不足」に関しては富山大(医)2018の問題が参考になる。
- 「機械は医師に取って代わるか」と「新たな技術が医療でどの様に使われるのか」とについて、約100語で英文を書かせる問題。配点比率は15%ほどであろう。ダ・ヴィンチ外科手術システムなど高度な医療機器は昨今話題となっているので、それに関する知識があれば書きやすい。特にAIの医療技術への応用を初めとして話題に事欠くことはないだろう。ただし、機械技術一般の応用可能性を論じるだけではなく、臨床における医師と患者とのコミュニケーションなど「人間学的側面」をあわせて論じることが必要であろう。問題はそこまでに思考が及ぶかどうかである。その意味では、[2]と問題意識は通底する。
総評
問題量や設問の構成は例年と同じである。ただし、今年度は例年以上に英文が読みやすかった。これはテーマが全て入試頻出のものであったからであろう。また、英作文も同様の形式で出す順天堂や日医よりも解きやすかった。日医のように読解問題にリンクした形式ではないので、受験者のフリーハンドが効く。ただし、全体的には制限時間に比して設問数、特に記述問題が多いので、時間的には厳しい。なお、正規の最低合格ラインは65%ほどであろう。最後に付言すれば、慶應のように記述問題を重視する大学は、添削指導を受けることが必須である。和訳だけでなく英作文も解答案に典型はなく、個々の解答が具体的に検討されなければならない。個別指導が生きる所以である。