順天堂大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
勝亦 征太郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 窒素循環
(窒素同化、窒素固定、脱窒、硝化、分解者のはたらき)
マーク式 やや易
2 精子形成と受精
(生殖細胞、受精のしくみ)
マーク式 標準
3 植物の生活環
(シャジクモ、コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物)
マーク式 やや難
食物の消化
(消化酵素、セクレチンの発見に関する研究考察)
記述式 標準

問題分析

    1. 窒素循環に関する問題。穴の多い図ではあるが、教科書や資料集に掲載されている図と同じ全体像で見慣れた形での出題。穴を埋めるのに手間取ることはさほどなかったであろう。脱窒については教科書を超えた知識となったが、消去法で正答にたどり着けるようになっている。正しい知識と矢印の向きへの意識があれば、ミスなく完答できるレベルである。
    2. 精子形成と受精に関する知識問題。少々細かい知識が問われており、教科書だけでなく資料集を使って内容を一段階掘り下げて習得できていたかが差となっただろう。特に問2の(4)は、精子頭部内に存在するときは中心体であるが、卵内に侵入し微小管を伸長すると星状体となること、かつ移動能力のない卵核と精核が星状体から発達したチューブリン繊維網によって卵の中央に移動させられる、という現象を知っている必要があった。
    3. 植物の生活環に関する知識問題。多くの内容が教科書に記載されているもので、標準レベルと言えるのかもしれない。しかし植物の系統について、果たしてどれだけの受験生がこの問題を標準レベルだと言って解けるだろうか。いわゆる私大医学部の頻出とは言えない単元であり、この単元はいいだろうと早合点してこの単元の学習が薄くなっていた受験生には痛恨の思いとなったことだろう。その上で、問3で「イチョウとソテツの雄性配偶子は精子だが、その他の裸子植物の雄性配偶子は精細胞である」ことを問われていたように、頻出度の割に求められる知識レベルは高かった。それでも他の単元と同様の学習を行い、正確な知識が定着していれば選択肢で迷うことはなく、このⅠ-3が当落線上にいる受験生の合否を決めた問題と言って良いだろう。
  1. この記述式のⅡの内容と難易度は年度によって差が大きく、昨年度は受験生にとってかなり厳しい内容であったが、今年度は食物の消化という理解しやすい内容で難易度も下がった。問1は(イ)を糖や炭水化物と答える受験生が多そうなのだが、基質を問われているので物質名でデンプンと答える必要がある。また(サ)は少々難度が高く、トリプシンを分泌している外分泌腺を問われているので「すい外分泌腺」と答えることになり、これは受験生には相当厳しかっただろう。問3のセクレチンに関する研究考察については、これまでに問題集などで頻出のペプチドホルモンに関する実験考察問題の類題を数多く解いて、問われ方や狙い目をどれだけ手の内に入れてきたかがポイントになっただろう。

総評

 出題形式に大きな変更はなかったが、昨年度と比べ大問Ⅱは手を付けやすかったと思われる。問題はすっきりしており内容は理解しやすいものであるが、正しい知識、実験考察問題の演習経験、記述解答における表現力など総合的に問われるものであった。大問Ⅰ-3については、試験中に「この単元は勘弁してくれ」と思ってしまった受験生の姿が目に浮かぶ。教科書レベルを隅から隅までという言葉の重さを痛感したことであろう。教科書レベルというと簡単なレベルと思う人もいるだろうが、最近の生物の教科書は簡単な内容とは言い難い。しかも、小学校、中学校で習ってきた理科の内容が高いレベルで理解定着されていることを前提にして文章が作成されている。既習事項でも理解定着が不足しているならば前の段階へ戻ることを躊躇してはならない。その上で受験生物の内容を把握し、資料集も活用した高い精度の知識を理解定着させ、基本から試験本番のレベルまで多様な演習をする、といった学習を重ねた受験生が合格点に達する良問であった。