千葉大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
竹内 純

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 理想気体と実在気体 記述式 標準
2 炭素の単体とその利用 記述式 標準
3 フェノールの合成とその誘導体 記述式 やや易
4 油脂の決定 記述式 やや易

問題分析

  1. Ⅰは理想気体の法則に関する基本的な内容であり、完答したい。Ⅱは理想気体と実在気体の相違点、およびファンデルワールスの状態方程式についての出題である。ファンデルワールス定数の意味も含め、問題集等で経験していれば解ける設問であるが、問5、問6の論述問題は習熟度が解答時間に影響したであろう。
  2. 炭素の同素体に関する知識問題から、結晶の密度、電池、化学平衡までさまざまな理論化学分野の出題がなされている。標準的な設問が多いが、問4のリチウムイオン電池のイオン反応式はやや発展的な知識問題であった。また、問7ではアレニウスの式が出題された。指数関数を用いた形で与えられているが、活性化エネルギーを表すには両辺の自然対数をとった形の方が扱いやすい。これらの設問も、問題集等での習熟度が影響したと思われる。
  3. フェノールおよびその誘導体の合成法に関する大問で、基本的な設問が多く取り組みやすいものであった。ベンゼンのクロロ化において触媒作用を示す物質を問われているが、知らなくとも問7の内容から類推できるようになっている。また、p-ニトロフェノールから合成される対症療法薬(アセトアミノフェン)が出題されたが、これも構造式を書くだけなので置換基の変化が理解できれば解答できる。問5(3)の計算問題も含め、完答を目指したい。
  4. 未知の油脂Aの構造を決定していく大問である。油脂が関連する計算問題は煩雑になる場合が多く、さらに問2ではけん化価の定義を知っている必要があるため、一見解きにくいように思える。しかしながら、問1を解答した段階で、油脂Aの構成脂肪酸はすべて炭素数18のものとわかる。典型的な題材であり、問3以降の設問は大問3同様取り組みやすいので、やはり完答を目指したい。

総評

 昨年度同様に大問4題の構成で、全体的な難易度は昨年度よりもやや低下し、例年からみても易しめであった。特に有機化学の大問3、4は解きやすく、満点も狙える構成であったため、合格者平均点も高くなると予想される。一方、理論化学の大問1、2には2題の論述問題と3題の過程を記述する計算問題があり、解答時間が必要な構成であった。
 理論化学の大問1、2には、実在気体とファンデルワールスの状態方程式、リチウムイオン電池のイオン反応式、アレニウスの式といったテーマが出題された。これらも発展的なテーマではあるが、近年ではこのようなテーマも多くの市販問題集で扱われるようになってきており、きちんと習熟していた受験生には過去問よりも取り組みやすく感じられたであろう。
 以上のように、本学をはじめとする国公立大医学部志望者は、市販問題集レベルの内容は早めに(目安として10月中までに)習得しておくことが望ましい。その際、単に解くだけではなく、基本事項や問題解法などについて説明する練習を交え、論述問題対策も並行して進めていくとよい。11月以降は、本学以外の国公立大や難関私立医系大の過去問も用いて、より発展的な内容に触れ、計算過程の記述や論述問題の実践演習を行っておくことが重要である。