おかあさんの参考書
小学5年生以下の夏の過ごし方を考える

小学5年生以下の夏の過ごし方を考える

鳥居りんこ

今年の夏も全国的に猛暑となっています。
中学受験を目指す小6の子どもたちにとっては「夏を制するものは受験を制す!」の合言葉で、日々、受験勉強を頑張る夏になるかと思われますが、小5以下であれば、勉強だけではない「充実の楽しい夏」にしてあげてほしいなと思います。

具体的には「体験の夏」ということなのですが、実はこの“体験”が受験への合格切符をつかむのに直結していたりします。

家族旅行で“非日常体験”を

“体験”には、家族で旅行に行くことを一番におすすめします。
行先は必ずしも遠方でなくても、泊まりでなくてもOKです。ご家庭の都合が許す範囲で、家族が行きたいと望む場所で構わないのですが、ぜひ、その計画段階からお子さんも参加させてあげてください。

計画を立てる道筋は、受験勉強をする上でも、目標を持って自らを律していくのにとても良い練習になるでしょうし、子どもながらに参加させてもらえることに、ある種の高揚感と年齢に応じた責任感を持たせることにもなります。

さらに言えば、子どもは高校生になれば親から離れていくもの。中学生であっても、中高一貫校は意外と長期休みも忙しいので家族全員参加の旅行というのが難しくなっていきます。

家族でワイワイと予算を考え、行き先を決め、ルートを探り、そこでの“お楽しみ”を調べ、その日を待つという経験は家族の結束を強めますし、何よりも生の体験が本当の意味での勉強になります。
つまり、行く前から楽しみ、行く道中で楽しみ、着いて楽しみ、帰って来ても、なお、余韻を楽しむということです。

A君のケースをお伝えしましょう。東京在住である彼は現在、難関校である海城学園に通っていますが、そのきっかけは小5の夏に家族で行った旅だったそうです。

当時のA君は「受験はしたい」けれども「勉強はしたくない」という状態で、偏差値は40台前半が定位置(首都圏模試)。A君の母は困り果てて、よく愚痴とも相談とも言えないメールを筆者にくれていました。
「やる気がないなら、受験はやめなさい」と何度言っても「受験はする!」と言ってきかない。「ならば、勉強しろ!」ということで親子バトルが激しいという悩みをお持ちだったのです。

そんな折りに夏休みが来て、近場でいいからどこかに家族旅行をしようという話が持ち上がったといいます。

「けれども、私も夫も仕事で忙しかったので予算だけ伝えて、後はAに丸投げしました」

彼はいつになくやる気になり、ネットを駆使しながら計画を立てて、両親にプレゼン。その案の足らないところなどを修正しつつ、見事、プレゼンは成功し、三浦半島への旅が実現したそうです。

そこで、A君はあるものに魅了されます。
それは三浦半島の南端にある三浦層群三崎層と呼ばれる地層。波に侵食されている海食崖と呼ばれる岸壁だったようです。

「この岩はどうしてこんな不思議な形をしているのだろう?」と疑問に思ったそうで、それから断層やプレートなどの地球規模の学びである地学に興味が出てきたといいます。

「そこからです、岩石オタクになったのは。暇さえあれば自分で調べていました」とA君の母。その情報は塾にも伝わり、塾の先生から海城学園が誇るサイエンスセンターの存在を知らされたそうです。

そこで出かけた学園祭の理系展示に魅了され、A君は「絶対に入る!」と宣言。

A君は 小5の秋からは自ら予定表を書き、塾の先生にも頻繁に勉強方法などを相談するようになり、成績は急上昇。公約どおり見事に海城学園に合格しました。
A君の母は筆者に「偏差値40からの中学受験でした」と笑顔で教えてくれました。

A君のようなケースは実は沢山あります。生で見たものの迫力や感動は格別で、本や動画で味わえるものではありません。
旅以外にも、昆虫や植物を育ててみる、買い物から調理・後片付けまでをひとりで経験してみる、家庭でできる実験をしてみるなど、様々な“非日常”体験は周りに沢山あります。
何がわが子にヒットするかはわかりませんが、生の体験の積み重ねが「これを知りたい!」「究めたい!」という気持ちにさせるのだと思います。

「好きな物」がある子は強い

皆さんが目指している中高一貫校には、それぞれに大切にしている“強み”があります。その強みは、学校ですから学問分野であることが多いです。例えば、歴史であったり、天体であったり、芸術であったりと様々ですが、その研究を専門にされている先生がいたり、その分野の設備が整っていたり、大学と連携していたりなど、実際に触れてみると、その学びの深さと面白さに感動すること、請け合いです。

もし、わが子の興味関心のある分野を後押ししてくれている学校に巡り会えるならば、A君のように「この学校に入りたい!」という強烈なモチベーションが生まれるでしょう。
このあたりは塾の先生が詳しいので、わが子の興味関心がわかっているならば、そこに力を入れている、あるいは温かく見守ってくれている学校を教えてもらい、実際にお子さんを連れて行き、合っているかどうかを親子で判断してみてください。

学ぶことは本来、楽しいものです。「これは何だろう?」あるいは「どうしたら攻略できるのだろう?」という謎が解けるのは学びの快感です。
そのために親ができることは、子どもが幼い頃より、五感をフルに活用した実体験を楽しみながら積み重ねていくことだと思います。

「好きこそ物の上手なれ」という諺(ことわざ)もあるとおり、「好きな物」がある子は強いです。それは知識量やモチベーションなど様々なメリットを生み、結果として受験にも役立つでしょう。

夏休みは座学だけではない五感を使った学びができるチャンス。ぜひ、5年生以下のお子さんには、この夏の機会に学ぶことそのものを楽しんでほしいと願っています。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

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