「中学受験に意味がない」は本当か? 公立中学と私立中学の違いから考える

「中学受験に意味がない」は本当か? 公立中学と私立中学の違いから考える

中学受験をする子どもは、多くが小学校3年生の終わりごろから「新4年生」として塾に通い始めます。周囲に中学受験をする家庭が多いか少ないかに関わらず、どの保護者も一度は「中学受験をしたほうがいいのか?」と、迷うのではないでしょうか。
その判断は、最終的にはご家庭次第ですが、子どもが成長するこの先10年の社会の変化を考えると「中学受験には意味がない」と一概に結論づけることはできません。中学受験にまつわる視点を整理し、じっくり考えていくことが大切です。

「中学受験に意味がない」と考える理由

理由1. 小学校の「お受験」と混同している

中学受験を考える保護者の中には、小学校受験と混同して考えている方が一定数います。公立学校という選択肢がある中で、私立学校を選ぶ、という点では中学受験と似ていますが、どのように子どもを評価するか、選抜の意味が違います。
知力も体力も未熟な幼児の場合、本人の能力を試すというより、子どもを通じて保護者の教育に対する考え方や、環境、これまでの育て方が評価される要素が大きく、小学校受験は「親の受験」とも言われます。一方、中学受験は学力検査による選抜がメインで、保護者本人は評価されません。どのような背景があったとしても、学力で勝負できるフェアな受験という点が、小学校受験と大きく異なります。

理由2. 中学受験をすると詰め込み教育の弊害が出ると思っている

小学校が終わったらすぐ塾に行き、夏休みや冬休みも講習に通う中学受験の勉強は「詰め込み教育なのでは?」と考えているケースも少なくありません。
たしかに入試に向けて知識を蓄えるため、集中して勉強する時期は必要です。けれども、中学入試の問題は暗記していれば解けるような内容ではありません。知識を活用しながら、課題解決に向けた高度な思考力や判断力が問われます。課題解決のためには最初のうちはじっくりと時間をかけて理解しながら解いていく必要があるため、塾では丁寧に考え方を教えているのです。それは時間がかかることであっても、決して詰め込み教育ではないのです。

理由3. 小学生に競争をさせるのはかわいそうだと思っている

中学入試は学力による選抜ですから、難関校や人気の学校に入るための競争の要素があります。また、塾内でのクラス分けや模擬試験など、受験勉強は競争の連続です。小学生のうちから過度な競争にさらされるのは、子どもの心に悪影響を及ぼすのではと考えたり、もし不合格だったときのショックから立ち直れないのでは、と心配する保護者もいるでしょう。
ですが、競争を否定しすぎるのも考えものです。実際の塾での子どもたちを見ていると、他人を蹴落とすのではなく、切磋琢磨しながら「競い合う」姿が見られます。ともに努力をし、頑張りを認め合う、そんな経験ができるのも中学受験なのです。

理由4. 習い事や好きなことを「あきらめなければいけない」と考えている

中学受験の勉強を始めたら、今まで続けてきた習い事を全部やめなければいけない、そう極端に誤解している保護者も多いようです。ですが、そんなことはまったくありません。
野球やサッカー、テニスなどのスポーツや、バレエ、音楽などの芸術分野の習い事をこの先も続けたいからこそ、中学受験を目指すご家庭もあるのです。その場合、受験勉強と両立させながら上手に習い事を続けていくほうが、勉強のモチベーションも上がります。上手な学習リズムを作れば集中力も高まりますし、生活のメリハリも出てきます。子ども自身にタイムマネジメント能力がつき、自主性や主体性が高まる効果もあります。

公立中学に進学するリスクとは

リスク1. 教育方針に合わせた学習環境を選択できない

公立中学校は、地域に住む子どもに学びの機会を提供し、社会の一員として必要な力を伸ばすことが主眼におかれます。市町村などの自治体が設置し公費によって運営されるため、その学習環境は横並びになることがほとんどです。
価値観が多様化しグローバル化が進む中、公立中学校では我が家の教育方針に合わないご家庭も出てきます。たとえばプログラミングなどのICT活用能力を高めさせたいなら、最近になってやっと1人1台の端末を使った授業が始まった公立中学では条件に合いません。中学受験をすることで、すでにICT教育が充実している学校を自由に選ぶことができます。

リスク2. 高校受験は「内申点」がものをいう

中学受験と違い、高校受験は「内申点」が合否に関わることをご存じの方も多いでしょう。内申点とは、9教科の5段階評定の合計のことで、ここに学校生活での行動や活動の評価を合わせたものが内申書と呼ばれます。高校受験では学力検査と内申書で合否を判定します。
内申点は定期テストの点数がよければ高くなるわけではありません。課題への取り組み姿勢や、提出物の状況、授業中の態度や意欲なども反映され、タイミングを失うと「巻き返し」がききません。多感な時期である中学時代は、勉強そのものに意欲がわかなかったり、教科の好き嫌いがはっきりする時があるものです。9教科全方位にがんばらなければ上がらない内申点は、実は子どもにとって厳しいシステムなのです。

リスク3. 案外狭い選択肢

中学は公立に通って、高校受験のときに私立を検討したほうが選択肢が多いのでは? とイメージする保護者も多いかもしれませんが、かつてより選択肢は狭まっています。
首都圏の私立学校を中心に、高校からの募集を行わない「中高6年完全一貫化」に移行する学校が増えているからです。また、公立高校でも難関と呼ばれる学校は、中高一貫化を行い、高校からの募集をやめるケースも出てきています。公立中学校に進学すると中学受験でしか得られない入学のチャンスを逃してしまいます。高校受験の様子も、保護者の時代とは大きく変化していることに注意が必要です。

中学受験をするべき理由・メリットは?

メリット1. 大学進学・大学受験に有利になる

中学受験を行う学校は、高校を併設しているか、または中高一貫の6年教育を行っています。受験を経ずに高校に進学でき、その間を基礎学力の定着に充てるカリキュラムが用意されています。
学力の土台がしっかりしているので高校での勉強はスムーズになります。さらに高校3年次は大学受験に向けた演習中心の学習時間が十分に確保できます。
大学付属の私立中学校に進学する場合は、内部推薦という形で大学進学が可能です。中高6年間を本当の意味でゆとりを持って過ごすことで、大学入試に必要な学力を獲得できるだけでなく、自分の将来の職業や生き方につながる進路を考えるキャリア教育にも十分な時間を使うことができ、未来の選択の幅が広がります。

メリット2. 自分に適した環境で10代を過ごせる

私立中学校は、都内だけで約180校あります。さまざまな魅力のある私立中学の中から、子どもに合う学校を選ぶことができます。公立中学校でも学校選択制があり、希望する中学を選べる自治体もありますが、その選択の幅は私立には及びません。私立は通学域を広く設定しているところがほとんどで、都道府県をまたいだ通学が可能です。
自分が安心できる環境で10代を過ごせれば、個性を伸ばし、達成感や自己肯定感を高めることができます。未来を切り拓いていくためのポジティブなマインドを育む入口が、中学受験なのです。

メリット3. 特別じゃないからこそ、個性に合った学校選択が可能

私立中学校は、各校が建学の精神にのっとり、個性豊かな教育を行っています。偏差値や難易度では計れない、学校独自の文化や価値観に共感して学校を選ぶこと。これが中学受験の本質です。普通の成績の子どもこそ、中学受験をする意味があるのです。

メリット4. 高校・大学受験とは異なる偏差値の仕組み

志望校の合格の目安になる「偏差値」は、自分がその入試に参加した母集団における、相対的な位置や、入試の難易度を知る判断材料になります。ただし、中学受験の偏差値は高校や大学受験における偏差値とは違います。高校や大学入試の母集団は成績のばらつきが大きいため、偏差値50は、平均的な位置と捉えることができます。
一方、中学受験の場合は小学校で成績上位者が母集団となるので、偏差値50は小学生全体から見ると上位に位置します。偏差値を点数のように考えるのではなく、「その中学校を志望する人の中での立ち位置を示すもの」という観点から判断するのが重要です。

メリット5. 子どもの成長に大きな影響を与えるのは環境

心身ともに成長期の真っただ中にある子どもたちに、環境が与える影響は小さくありません。
環境には、校舎や体育館、グラウンド、校外施設、学校そのものの立地といったハード面と、授業や部活動、学校行事、そして友人や先生、先輩や後輩たちといったソフト面があります。その両方から刺激を受け、仲間と切磋琢磨しながら充実した学校生活を送ることで、成績が伸びる、一生の友人ができる、未来を決定づける原体験ができる――など、豊かな経験ができます。中学受験は、子どもの可能性が大きく花開く、そんなドアの入口に立つことを意味します。

まとめ

中学受験に親子でチャレンジすることは、ご家庭の教育方針に合った学びの環境を選び取ることにほかなりません。
私立中学校は「勉強」だけではない、さまざまな価値観のもと、バラエティ豊かで個性的な教育を展開しています。中高6年間、真にゆとりのある学校生活を送ることが、お子さんの個性や可能性を引き出してくれるでしょう。
中学受験は高校受験と違い、内申点がなく、偏差値が持つ意味も特別です。普通のお子さんだからこそ、中学受験をする意味があるのです。


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