横浜市立大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:3題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 読解(5問):「文化戦争の下
での文学者としての成長」
(約600語)
論述式 標準
2 読解(5問):「リーシュマニア症の要因」(約600語) 論述式 標準
3 読解(6問):「スマート
テクノロジーによる個人情報の利用」(約1100語)
論述式 標準

問題分析

  1. 下線部説明5問(本文中からの引用2問、自由論述式3問)で構成されている。配点は130点(32.5%)ほどであろう。出典はThe Washington Post。「西洋文学」を基準とする既成の価値観に対する少数民族など社会的マイノリティーの文化との闘いが「多文化主義」の出現で終止符を打たれるまでの時代状況の中で、アジア人としてさまざまな文学を学んだ著者の体験が語られている。なお、「文化戦争」に関しては東京外国語大(外)2003の問題が参考になる。
  2. 下線部説明3問(本文中からの引用1問、自由論述式2問)、下線部英訳1問、下線部和訳1問の計5問で構成されている。配点は120点(30%)ほどであろう。出典はThe Financial Times。2010年にスペインで蔓延したリーシュマニア症という熱帯病を事例として、感染症が広がる社会的・環境的要因について論じたものである。本学では例年1題は医療系分野からの出題があり、昨年度も本年度と同じくこの〔2〕だった。なお、リーシュマニア症など熱帯病の拡大については、気候変動との関係では、獨協医科大2009、また家畜の飼育形態との関係では旭川医科大2002の問題が参考になる。
  3. 下線部説明4問(本文中からの引用1問、自由記述式3問)、下線部英訳1問、下線部和訳1問の計6問で構成されている。配点は150点(37.5%)ほどであろう。出典はThe New York Times International Edition。ネットワーク技術による個人情報の政治的・経済的利用への懸念、ならびにそれを阻止する技術の民主的利用について説かれている。雑誌論文らしくネットワーク技術が市民生活に及ぼす影響を説きながら読者に関心を持たせる構成になっている。なお、「スマートテクノロジー」に関しては、同志社大(文)2014の問題が参考になる。

総評

全体的な出題傾向は昨年度と同じで、全て読解問題となっている。とは言え、英訳問題も複数含まれているので、総合的な英語力が試されていると言えよう。「問題分析」で示したように、英文の典拠はすべて新聞記事である。この傾向は本学に限ったことではない。今回採用された英文のテーマは「比較文化論」「感染症」「ネットワーク技術」といういずれも入試頻出のものである。また、設問は全体の論旨に関わりながら、細かい論点を拾って考えさせる構成となっている。問題構成も説明問題を中心として、和訳、英訳問題が適宜織り交ぜられている。およそ国公立大学医学部の問題として十二分な資質を備えていると言える。なお、本学の問題は語注が多いのが特徴的であるが、それにいちいち頼ることなく、全体としての論旨を素早く読み取れる習慣をつけることが必要である。
また、毎年の設問構成がよく似ているので、過去問を解き慣れておくことは他大学以上に必要である。難易度も国公立大医学部の問題としては標準的である。ただし、制限時間が90分であるので、1題あたりおおよそ30分で解かなければならない。おそらく本学の難度の高さはその一点に集約されるであろう。つまり、制限時間内に解ききることが難しいことである。この数年の最低合格ラインは70%ほどであったが、今年度も同程度であることは間違いない。このような理由から、本学合格の鍵は、①頻出テーマの英文を読み慣れていること、②英文の論旨把握、③論述答案の作成練習(添削指導を受ける)、という三点に集約されるだろう。