東京医科歯科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問2題
分析担当
安部 雄太

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 力学:箱とその中にある物体との運動 記述式 標準
2 電磁気:荷電粒子の作る電位と等電位線の作成 記述式 やや難

問題分析

  1. 箱とその中にある小物体についての問題。前半は、箱に一定の力を加えた場合の箱と物体の運動を考えさせる問題であり、設定として床と箱の間に摩擦はないが、箱と物体間の摩擦の有無によって箱と物体の運動が変化するため、慣性系・非慣性系でのそれぞれの運動を整理しながら解く必要があった。後半は箱と物体間にのみ摩擦がある条件で箱に撃力を加えて、初速度を与え、箱と物体との繰り返し衝突を考えさせえる問題であった。前半・後半のどちらも典型問題であり、合格点をとるには大問1は完答したい。大問2を解く時間を確保することも考え、グラフの作成を含めて素早く正確に処理する必要があった。
  2. 電磁気の最初の単元である、静電気力から点電荷の作る電場・電位や等電位線の作成について問う問題であった。前半(1)~(5)にかけては基礎的な内容であり完答したい。後半の(6)~(12)では、同じ正の電荷量をもつ2つの点電荷が作る電位と等電位線の作成を与えられた2次までの近似式から考えさせる問題であり、多少の微分計算が必要となる。(6)原点を通る等電位線の作成では、地理の等高線の考え方や、等電位となるための2つの点電荷からの距離の条件を電位の公式から考える必要があった。(7)以降では、与えられた2次までの近似式を処理することで等電位線の概形をより正確に作成する流れを、誘導に従って解答していくが、(11)では計算量も多く、すべてを時間内に解き終えるのは厳しい。(1)~(10)までを解き終えることが目標となる。

総評

 力学・電磁気からの大問2題構成であり、昨年度と構成は変わらない。大問2:電磁気後半がやや難化した影響から全体を通して合格点は昨年度よりも低いと思われる。東京医科歯科大学の物理は学部共通問題として典型問題からの出題がメインであり、その中で思考力を問う問題やグラフの作成問題等が医学科用の問題として追加されている。過去5年の問題では時間内に解き終わることも可能であったが、2023年度の入試では全体の問題量と大問2後半の計算量が多いため、時間内に解き終わることは難しい。大問1~大問2前半の典型問題部分(学部共通問題)をミスなく正確に素早く処理し、大問2後半(11)、(12)を除く問題まで解き終わることが目標である。
 本大学の対策としては、まず物理の基盤を作ることからである。問題内容自体は基本的な内容であり、学部共通問題も典型問題からの出題がメインであるため、公式の導出やグラフの作成等、教科書・問題集合わせて各単元しっかりと基本を重視した学習を行いたい。物理の基盤が出来れば、本大学の医学科用の問題を考える・解くというところまではたどり着ける。
 加えて、東京医科歯科大学の物理はスピードも必要となる。日頃から演習する問題について、自分で時間設定等を行い、負荷をかけて練習する必要がある。年間の予定の目安としては8~9月までに全体の基盤をある程度完成させ、そこから過去問演習・弱点補強を行いつつ、応用問題の演習を進めたい。出題される問題すべてが難しいわけではないので、確実に得点できる部分を落とさないようにする練習と同時に、応用問題が出題されても対応できるように演習をこなしていくことが対策となる。
 総じて繰り返しの反復演習、その中で正確性とスピードを養っていくことが本大学の合格には必要となる。各単元の基本事項を体系化しながら入試において基盤となる問題の復習を繰り返し行い、制限時間を設けて時間内に処理できるようにすることが大切である。