東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:大問4題
分析担当
増子 拓哉

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
A 確率 (球の取り出し) 答えのみ記述 やや易
Ⅲ 微分法・積分法・極限
(関数方程式・直交条件・面積)
記述式 標準
ⅠA 集合と論理・整数の性質
(無理数証明・余りによる分類)
記述式 やや難
Ⅰ Ⅱ BⅢ 関数・空間ベクトル
(空間における直線・内積・関数の最大値)
記述式 やや難

問題分析

  1. 番号のついた玉を4回取り出し、条件に合う取り出し方の確率を求める問題。前半は整数解の組の個数のカウントなので重複組み合わせの考え方を用いる。「8以下」の部分を8、7,…と場合分けをしてもよいが、不等号の場合は1文字追加して処理するという動きを知っていれば一発で求められる。後半は分数式の条件で、分母を払うと因数分解の形で解く整数方程式になる。整数解の組は4通りであるが、その1つ1つの場合の数は暗算で求められるレベルである。この大問は10分以内で処理したい。
  2. 関数方程式⇒グラフの直交条件⇒面積⇒和・極限がテーマとなっている、数Ⅲの全体の力を見る問題。 nという文字定数があるため、計算がやや煩雑になるが、微分して傾きの条件を考えたり、積分で面積を求めたりと、行うべきことは大変シンプルである。交点を求める部分では指数方程式に慣れていたかどうかで差が付いたであろう。積分計算や和・極限の計算は基礎レベルの内容であった。
  3. 2点間の距離が無理数であることを示す論証問題。無理数の証明を見て背理法がすぐに思いつき、有理数である文字で置くことができるとよい。式を整理していくと、整数方程式の解がないことを示す段階に入る。余りで分類すると示しやすいが、この発想に誘導等のヒントはなく、論証問題の経験を多く積んでいる必要がある。複雑になった部分は随時文字で置き換えたり、矛盾を示すために最大公約数を制限したりという積極的な動きが求められた。
  4. 前半は座標空間における2本の直線の交点を求める問題。ベクトルを用いて直線上の点を表現することには慣れておきたい。 a,b,cの関係式を立てる部分ではθ ⇒ r の順で1文字ずつ冷静に消去すればよい。後半は空間ベクトルの内積の最大値を求める問題。解法がいくつか考えられ、「a,b,cのみの式にして実数条件を考える」、「置換して分数関数の最大・最小を求める(⇒微分or相加相乗平均)」などが挙げられる。計算量は多いため、考え方や途中式を記述し部分点を稼ぐような取り方でも十分である。

総評

 昨年に比べて難化し2021年以前の難易度に戻った。大問Ⅰ、大問Ⅱの(1),(2)、大問4の(1)は基本的な動きで計算量もそこまで多くないため、ここをミスなくそしてスピーディに終わらせられたかが勝負であった。この部分で40%程度の得点が見込める。そして残りの問題でポイントとなる式や条件設定を多く書いて部分点を集めたい。数学を得意とする受験生は60%~、苦手とする受験生は45%程度取ることを目指すのがよいだろう。
 出題分野も例年と同じ構成になっており、大問Ⅰは確率、大問Ⅱは数Ⅲの微分積分、大問Ⅲは論証問題、大問Ⅳは図形問題というセットが長く続いている。2021年、2022年と徐々に計算量は減少していたが、今年は増加し元に戻っている。論証問題は例年(1)(2)…と分割されていたが、今回は単問であった点が特徴的である。
 対策として、各公式・定理や典型解法のインプットを出来る限り早い段階で終えることが重要である。基本~標準問題を必ず取ることをまずは目指したい。入試頻出の有名テーマにも一通り触れ、国公立大学で出題されるような論証問題や、自ら文字設定をしていくような図形問題などにも慣れておくと、アドバンテージが取れるであろう。