千葉大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
竹内 純

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 コロイド、浸透圧 記述式 標準
2 陰イオンの系統分離、
塩化物イオンの定量
記述式 標準
3 脂肪族化合物の決定 記述式 標準
4 合成高分子 記述式 標準

問題分析

  1. 問3まではコロイドや溶液の性質の基本事項であり、完答したい。浸透圧が関連する計算を要する問4以降が本番である。二量化するタンパク質という見慣れない題材であるが、カルボン酸の二量化を考慮するベンゼン溶液の凝固点降下などを扱った問題の経験があれば対応できたであろう。最終的な目標であるタンパク質の分子量に至るまでに全4問にわたって細かく誘導されているので、経験がなくともこれに沿って解ける技量を身に付けておくことが望ましい。
  2. Ⅰは陰イオンの系統分離実験である。金属イオンの系統分離とは操作が異なるが、沈殿を生じる陽イオンと陰イオンの組合せが理解できていれば同様に対処できる。ただし、酢酸を加えることの目的は無機化学の学習範囲外であるため、これを理解できたかどうかが解答時間や正答率に影響したであろう。
    Ⅱはクロム酸カリウムを指示薬に用いた沈殿滴定(モール法)である。クロム酸イオンの性質や溶解度積を用いた計算を含むが、このテーマも大問1同様に市販問題集にも収録されるようになってきているものであり、経験があれば完答も可能である。
  3. 分子式がC4H8であるので、候補となる化合物の構造式をリストアップすることは容易で、基本的な解法で解き進められるシンプルな問題構成である。しかし、問2以降に確実に解答するためには、アルケンのオゾン分解による生成物、非対称なアルケンへの付加反応の選択性などの知識も求められる。典型的な構造決定の演習だけでなく、教科書や資料集・参考書を隅々まで読んで知識を習得しておかなければ、確信をもって解答を導き出すことは難しい。
  4. 合成高分子に関する総合的な大問である。ポリ乳酸の合成法やリモネンの構造式のような発展的な知識設問もあるが、その他の設問はおおむね標準的なものになっている。本学のみならず、医学部入試では高分子化合物が含まれる計算問題が頻出であり、問6のような問題を素早く確実に(計算過程の記述も含めて)解答できるよう習熟していることが求められる。

総評

 昨年度同様に大問4題の構成で、全体的な難易度は昨年度よりもやや難化したものの、例年からみれば易しめであった。理論・無機化学の大問1・2には過程を記述する計算問題が4題あり、問題集などで類題を習熟していたかによって所要時間が増減したと思われる。一方、有機化学の大問3・4には、「その知識をもっている受験生はゼロに近いであろう」という問題もあり、易しかった昨年度と比べて例年並みの難易度に戻りつつあるような傾向が見受けられた。
 上述の通り、近年の本学入試でみられるようなテーマは市販問題集でも扱われるようになってきているもので、きちんと習熟していた受験生には過去問よりも取り組みやすく感じられるはずである。本学をはじめとする国公立大医学部志望者は、市販問題集レベルの内容は目安として10月中までに習得しておくのがよい。その際、単に解くだけでなく、基本事項や問題解法などについて説明する練習を交え、論述問題対策も並行して進めていくと効果的である。そして、11月以降は本学以外の国公立大や難関私立医系大の過去問も用いて発展的な内容に触れ、計算過程の記述や論述問題の実践演習を行いながら、初めて見る内容にも対応できる応用力を鍛えておくことが重要である。