杏林大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問4題
分析担当
鍛治 彰均

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
小問集合
(生体分子、体液、遺伝子、植物、進化)
マーク式
中問集合
(呼吸、DNA、心臓)
マーク式&計算 標準
発生
(アフリカツメガエルの分化と誘導の実験考察)
マーク式 標準
色覚と学習行動
(ミツバチの感覚と学習行動の実験考察)
マーク式 標準

問題分析

  1. 計9問からなる小問集合で、いずれもごく基礎的な知識問題で構成されており、全て正解したい。動物だけでなく、植物生理、植物群落、進化など幅広い出題となっている。
  2. 計9問からなる中規模問題集合で、典型題から構成されている。問1は呼吸からの出題でミトコンドリアの図と反応系の存在場所を問う⑴⑵はミスしたくない。⑶は補酵素の水素受容を意識した反応式分析、⑷は化学浸透説におけるプロトンの移動でいずれも標準的。問2はDNAの構造分析でやや差がつく。⑴ではデオキシリボースの構造式を問うているが、核酸やヌクレオチドについての幅広いリテラシーを備えておくべきだという大学側のメッセージとして受け取り、学習に活かしたい。問3は近年私大医学部で頻出の心圧-容積グラフで、経験の有無で出来不出来にかなり差が出たと思われる。グラフの変化を、房室弁と大動脈弁の開閉と左心筋の収縮・弛緩の関係を明らかにして理解しておきたい。
  3. 計5問からなる発生がテーマの問題。問1〜3は知識問題で分化の実験を交えているが中胚葉誘導の知識を引き出すだけである。問4、5は予定外胚葉領域が表皮、神経管に分化する分子機序を分析する問題。典型的な実験でありBMPや、ノギンの振る舞いを知っている受験生も多かったものと思われる。その場合、知識問題として解決に至れたと思われる。
  4. 計4問からなるミツバチの学習行動に関する問題。問2、4の考察で差がつきやすい。4つの実験があるがいずれも文章は読解しやすく、曖昧な表現や受験生をミスリードするような内容がなく良質な考察問題である。さらに実験4のグラフやイメージは実験内容や結果を比較的分かりやすく誘導してくれており、分析の補助として効果的に機能したものと思われる。

総評

 本年度も大問4題で知識型問題と考察型問題がバランス良く配置され、基礎から標準レベルの問題を中心に構成されており、取り組みやすいセットであった。直近2、3年と比較し、知識型問題が多く得点しやすかったものと思われる。典型題がかなり多く、定番の生命現象や実験に対する理解と知識が勝敗を左右しそうだ。
 前半の大問2つのような基礎的な出題への対応として、教科書や市販の参考書に出てくる生命現象、細胞、物質などの固有名詞の定義を厳密に記憶し、セミナーやエクセルなどの教科書傍用問題集で何度もアウトプットし、素早く正解できるよう訓練しておきたい。さらに杏林大学では毎年、教科書に掲載されている絵図やグラフやモデルなどが必ず出題されるので、日々の学習の中でこれらの絵図の理解と記憶の意識づけを持つ必要がある。
 また、後半の大問2つに見られるような実験考察系の問題への対処としては、説明文の中で必ず「正常」「野生型」が定義されているので、こうした定義や設定を正しく把握すること。そして「異常」「変異型」「阻害」が引き起こす結果を「正常」と比較してその理由や機序を分析する訓練を豊富に積んでおきたい。具体的な対策として、杏林大学の過去問はもちろんとして、北里大学や東京医科大学の過去問にある実験考察系問題の演習も有効と考える。その際、自分の理解や把握の曖昧さを排除する厳密性、仮説を立てる勇気と、その仮説を否定/肯定していくしなやかな論理能力を養っておきたい。