横浜市立大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:大問3題
分析担当
川口 奈奈子

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 問題文1;発生と分化
問題文2;細胞間結合
問題文1は記述式全5問。
論述は200字、50字、75字の3問。
問題2は記述式全4問。
論述は75字,200字、文字数指定ないものが1問。
易から
標準
2 進化と生態系 記述式全7問。
論述は90字4問、50字1問。
易から
標準
3 遺伝子とその発現制御に
関する考察問題
記述式全8問。
問題文1は基本用語を答える問題。
問題文2は実験考察問題。
論述は90字、80字、130字、70字、
文字数指定ないものが2問。
易から
標準

問題分析

  1. 問題文1において、ES細胞やiPS細胞の違いについての記述問題があり、200字以内ということを考えると、作製方法の違い(ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得るが、iPS細胞は皮膚や血液、尿由来細胞に山中4因子を導入して作製する)に加えて、iPS細胞はES細胞ほど初期化されているわけではないことや、再生医療における倫理的問題や免疫拒絶の有無などに言及しても良いかと考える。問題文2は基本的な問題であるが、腸のグルコース輸送体については、200字以内ということを考えると、Na+と共に輸送する輸送体、グルコース濃度に依存して輸送する輸送体などの機能を詳細に記述する必要があると思われる。
  2. ジャイアントケルプから藻類が出現した時期、それを捕食するウニ、貝類などの動物門を答える問題に続いて、ラッコが減少する理由を考える問題が出題された。ラッコが減少するとジャイアントケルプが減少し、生態系の維持に打撃になることについて、さらに温暖化も含めて環境問題について考える問題である。
  3. 問題文1は真核生物の遺伝子の転写のしくみに関する基本的な用語の知識を問う問題であり、落とせない問題であると思われる。問題文2は、転写調節について、実験結果から考察する問題であるが、図1から、4時間の培養によって、X変異体においてmRNA量が野生型と比較して約3倍増加することが分かるが、転写が促進した可能性と、mRNAの安定性が損なわれた、すなわち分解が進んだ可能性が考えられる。図2の結果から、転写を阻害するアクチノマイシンDを加えても、mRNA量が減少しないことから、前者の転写が促進されているわけではなく、後者の分解に関わる酵素である可能性が高いと考えられる。このような内容を150字以内で記述するためには、図の実験結果の説明と、その解釈を詳細に説明することが必要であると思う。

総評

 例年と変わらず、理科2科目で180分、大問3題であった。問題の難易度も、例年の通りで、基本から標準レベルであった。基本用語を答える問題は、教科書レベルであるが、論述問題については、200字以内2題と、分量が例年よりも多くなっている。説明力、表現力がさらに問われているように思う。対策としては、標準的な問題集を一通りこなし、過去問を4,5年間分くらい行って、出題形式に慣れることが必要である。その際、解答例を参考にして、字数と内容もチェックしておく、すなわち、例えば、50字、100字がどれくらいの分量でどのような説明になるかといった感覚をつかんでおくことも時間内に書くためには有効ではないかと思う。字数がわかる原稿用紙を利用するとよい。また、日頃から、生物に関する様々な事象や実験結果について説明(表現)することを心掛けることも有効かと思う。論述に関しては、教師や講師に添削してもらうようにすることが、科学分野に求められる明快な記述文を書くためには望ましいと思う。