横浜市立大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:3題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
〔Ⅰ〕 読解(5問):
「数という概念」(約750語)
記述式 やや難
〔Ⅱ〕 読解(5問):
「バスの中での差別的出来事」(約600語)
記述式 標準
〔Ⅲ〕 読解(6問):
「AIを用いた手術用ロボット」(約1000語)
記述式 やや難

問題分析

  1. 同義語1問(本文より抜き出し)、内容説明3問、下線部和訳1問の計5問で構成されている。配点は130点(32.5%)ほどであろう。「数」という概念が必ずしもすべての文化に共通に存在するものではないことに関する論稿である。設問形式は昨年度と同様で、一昨年度が全て説明問題であったのと比べると多様な形式を織り交ぜている。ただし、語数は昨年度より300語ほど増えた。なお、内容的には、認知的人工物に関する問題であるという点では、日本医科大(2020前期)、千葉大(2010前期)も参考になる。特に前者では数学的概念と数的処理能力との関係が問題となっていたという点で、この問題を解いていたら参考になっただろう。
  2. イラスト説明1問、下線部説明3問、下線部英訳1問の計5問構成。配点は130点(32.5%)ほどであろう。語数は昨年度より100語ほど減った。本問が特徴的なのはイラストが用いられていることである。これは昨年度より始まったもので、昨年度は風刺漫画、今年度はバスの座席配置図が用いられた。非常に特徴的なもので、受験者層がビジュアル世代であることを意識したものであるだろうし、また言語的思考能力を画像認識を絡ませて試すという点で出題者の意欲を強く感じさせるものである。この傾向は恐らく来年度も続くであろう。内容面でも、アジア人への人種差別に関するエッセーという点で、昨年度と似ている。なお、人種差別に関する過去問としては、自治医科大(2007)、秋田大(2011前期)、岐阜大(2020後期、2016前期)も参考になる。
  3. 下線部説明3問、本文中からの具体例引用1問、下線部和訳1問、下線部英訳1問の計6問で構成されている。配点は140点(35%)ほどであろう。語数は昨年度より250語ほど増えた。なお、人工知能の医療への応用に関しては、医学部での出題としては、日本大(2020)、福島県立医科大(2017前期)、大分大(2017前期)、また医学部以外では慶應大(環境情報2013)、東京薬科大(生命科学2019)が参考になる。

総評

 全体的な出題傾向は例年と同じで、全て読解問題。英文の典拠は、2題は単行本、他の1題は新聞記事である。例年は新聞や雑誌記事からの引用が多く、The Washington Post, The Financial Times, The New York Timesなどから採用されている。なお、昨年度は医療系英文が一題も出題されなかったが、本年度は例年通り1題出題された。これまでも、「感染症の原因」(2020)、「ドローンによる医薬品配達」(2019)、「遺伝子治療」(2018)、「虚偽記憶症候群」(2017)、「手術中の意識の覚醒」(2016)、「遺伝子検査」(2015)、「海藻を消化する腸内細菌」(2014)、「ヨーロッパにおけるマラリアの懸念」(2012)など、医療系の問題が通例1題は入っていた。設問は全体の論旨に関わりながら、細かい論点を拾って考えさせることを主眼として作成されている。問題構成も説明問題を中心として、和訳や英訳問題が適宜織り交ぜられ、非常にバランスが取れたものになっている。なお、本学の英文は語注が多いのが特徴的だが、全体としての論旨を素早く読み取る習慣をつけることが必要である。また、毎年の設問構成が似ているので、過去問を解き慣れておきたい。難易度と制限時間は国公立大医学部の問題としては標準的。しかし、合計点が400点で、1問当たりの配点が高いので、解答の詳細な検討が必要である。特に記述問題は一義的な解答例はないので、各人の解答が個別具体的に検討されなければならない。以上の理由から、本学合格の鍵は、記述型解答の添削という点に集約される。その際、解答例を根拠に自己判断せずに、担当講師に説明を受けながら、内容だけではなく書き方に至るまで指導を受けることが望ましい。個別指導の強みはこの点において遺憾なく発揮されることは言うまでもない。