慶應義塾大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問3題
分析担当
坂本 剛士

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
小問集合 力学/熱力学/原子 記述式 標準~やや難
波動(フェルマーの原理と屈折の法則、
レンズ(眼球モデル))
記述式 標準〜やや難
電磁気(導体球に関する電気容量、荷電粒子の運動) 記述式 やや易~標準

問題分析

  1. 小問集合
     問1 水の重力による位置エネルギーが運動エネルギーに変わり、それが内部エネルギーになった時の温度上昇に関する問題。それぞれエネルギーの式を等式で繋げばよいので容易な問題と言える。
     問2 半減期に関する問題。ウランの原子とその同位体に関する半減期の式を立て、2式を解けばよいのでこちらも容易な問題である。
     問3 地上に存在する空気分子のモル数を計算する問題。問題文にある「大気が存在する領域は地球の半径と比較して十分に小さい」ということから近似計算を行い、大気が存在する領域の体積は(地球の表面積)×(高度)となることに気付かなくてはならない。この部分も踏まえ、受験生にとってはやりづらい小問であったであろう。
  2. フェルマーの原理とレンズ(眼球)
     問1 フェルマーの原理(光は最短時間で到達できる経路を通る)から屈折の法則を導出する問題。上位校でたまに見られる有名問題である。問われているものそのものは難しいものではないが、問1(b)の近似計算が煩雑である。この部分さえ正しく行えれば完答できるであろう。
     問2 波動の眼球モデルに関する問題。角膜を通り網膜上に像を結ぶまでの直線の方程式を求める。物理というより数学の計算問題と言える。誘導にしたがっていけば(d)〜(g)までは容易に解ける。(h)に関しては、(g)の答えを使い光線が網膜上のどの部分に像を結ぶかを考えさせる問題である。直線の式の切片の位置が網膜上の像の位置にあたり、角膜の膨らみの変化により像がどう移動するかを考えなくてはならない。限られた時間内ではなかなか気付きづらい問題であったであろう。
     問3問4 ①光源から出た光が凸レンズを通った後に上下左右反転すること、②光源を鏡に対して折り返し、仮の光源から出た光で凸レンズとの像の形を考える。この2点に注意して丁寧に考えれば容易に答えに辿り着けるであろう。
  3. 導体球に関する電気容量と荷電粒子の運動
     問1 電気力線と電場に関するルールから地球の電気容量を求める問題であるが、問題文の説明が丁寧なので与えられた式に代入するだけで正解できてしまう問題である。
     問2 (c)〜(e)荷電粒子に関する基本的な問題であるので確実に正解したい。(f)は記述問題。荷電粒子の偏りから電場が生じ、そこから荷電粒子が力を受け軌道が変化してしまうという問題点がある。これはやや気付きにくい設定の問題である。

総評

 例年、第Ⅰ問の中で様々な知識問題が出題されていた。しかし、本年度は知識問題がなく分量も減った。第Ⅱ問、第Ⅲ問ともに例年と比較すると煩雑な計算問題の量が減り、内容もやや易しくなった。正規合格には8割は必要であろう。
 知識問題に関しては来年以降また例年通りに戻る場合もあるので、普段から細かい数値や言葉を覚えることを心掛けておきたい。本年度は「地上に存在する空気の分子のモル数」「人体の目に関する問題」など身近な物理現象の問題が出題されている。様々な物理現象を追究しておくことが重要である。幅広い知識が必要とされるだけではなく、それらをうまく利用し解答に辿り着くための高い思考力(様々な物理現象を定性的に捉える力)とそれを正しく素早く計算する定量的な処理能力も必要とされる。例年かなり複雑な値が答えとなることが多いので、計算力を高めておく必要がある。