横浜市立大学
基本情報
試験時間:90分/問題数:3題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 読解(5問):
「トランスユーラシア語族の起源と農業との関係」(632語)
総合式 標準
2 読解(5問):
「社会的環境に応じた人格の変化」(906語)
記述式 やや難
3 読解(6問):
「コウイカの生態」(925語)
記述式 標準

問題分析

  1. 下線部説明4問(記述3問、選択1問)と下線部和訳1問の計5問で構成されている。配点は130点(32.5%)ほどであろう。語数は昨年度より200語ほど減った。トランスユーラシア語族の言語が約9,000年前の中国北東部のキビ農家まで辿られること、また、その後、農民たちが北東アジア全体に移動するにつれ、これらの言語は北西にはシベリアとステップ地域、東には韓国と日本へと広がったことが述べられている。なお、本文の内容を地図で説明したイラスト問題が含まれている。この様な問題は一昨年度より出題されている。一昨年度は風刺画、昨年度はバスの座席配置図が用いられた。非常に特徴的で、受験者層がビジュアル世代であることを意識したものだろうし、言語的思考能力に画像認識力を絡ませて試すという点で設問の独創性を強く感じさせる。この傾向は来年度も続くであろう。なお、言語の起源に関する問題は、医学部では自治医科大(2016)が参考になる。
  2. 下線部説明3問(日本語2問、英語[30~50語]1問)、下線部和訳1問、本文中の語句抜きだし1問の計5問で構成されている。配点は140点(35%)ほどであろう。語数は昨年度より160語ほど増えた。内容的には、社会環境に応じて一個人の中に多様な人格が形成されることを説いている。なお、人格の変化に関する問題は、東京大(2020前期)が参考になる。
  3. 本文中からの1文引用1問、下線部説明3問、下線部英訳1問、下線部和訳1問の計6問で構成されている。配点は130点(32.5%)ほどであろう。語数は昨年度より260語ほど減った。コウイカの生態を特に捕食行動を中心に他の生物との関係で説いている。なお、イカなどの海洋生物の生態に関しては、医学部での出題としては、防衛医科大(2019)、三重大(2018前期)、北海道大(2015前期)、また医学部以外では早稲田大(人間科学2022)、横浜国大(2019後期)が参考になる。

総評

 全体的な傾向は例年と同じで、全て読解問題である。英文の典拠は、一題は単行本、二題は新聞・雑誌記事である。本学は新聞・雑誌記事からの引用が多く、これまでもThe New York TimesThe Washington PostThe Financial Timesなどから採用されている。なお、本年度は医療系英文が出題されなかったが、例年1題は出題される。「AIを用いた手術用ロボット」(2022)、「感染症の原因」(2020)、「ドローンによる医薬品配達」(2019)、「遺伝子治療」(2018)、「虚偽記憶症候群」(2017)、「手術中の意識の覚醒」(2016)、「遺伝子検査」(2015)、「海藻を消化する腸内細菌」(2014)、「ヨーロッパにおけるマラリアの懸念」(2012)などがその例である。英文の総語数は2463語で、これは昨年度の2766語より300語ほど少ない。とは言え、設問との関係から見ると、難易度はさほど変わらない。設問は全体の論旨に関わりながら、細かい論点を拾って考えさせることを主眼として作成されている。問題構成も説明問題を中心として、和訳や英訳問題が適宜織り交ぜられ、非常にバランスが取れたものになっている。なお、本学の英文は語注が多いのが特徴的であるが、それに頼ることなく全体としての論旨を素早く読み取る習慣をつけることが必要。また、毎年の設問構成が似ているので、過去問を解き慣れておくことが重要である。難易度と制限時間は国公立大医学部の問題としては標準的である。しかし、合計点が400点で、1問当たりの配点が高いので、解答の詳細な検討が必要。特に記述問題は一義的な解答例はないので、各人の解答が個別具体的に検討されなければならない。以上の理由から、合格の鍵は、記述型解答の添削という点に集約される。その際、解答例を根拠に自己判断せず、担当講師に説明を受けながら、内容だけではなく書き方に至るまで指導を受けることが望ましい。個別指導の強みはこの点において遺憾なく発揮されることは言うまでもない。