東京大学
基本情報
試験時間:理科2科目あわせて150分/問題数:大問3題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 線虫の発生と遺伝子発現 理由の考察・記号選択 やや難
2 チンパンジーとヒトの進化 説明記述・理由の
考察・記号選択
標準
3 表現型の可塑性に
ついて
理由記述・実験の
考察・記号選択
標準

問題分析

  1. 線虫の分化に関する問題。問題とあわせて9ページとボリュームがあり、素早く読んで、問いにおいては的確に該当範囲を見つけ出すことが必要。問題自身は標準的であるが、選択問題(B・E)は「全て選べ」というものであり、実験の内容の記号選択(C)はあるものの、最後は記述(D・H)というように解答しづらい問題となっている。
  2. Ⅰは光合成についての総合的な問題。陽葉と陰葉の比較を中心に標準的な問題が並んだ。3行の記述問題が出題されたが、理由を含めてのものであるので難易度は高くない。Ⅱは光化学系についての問題。グラフの読み取りがメインになり、最後に考察の記述問題が出題。いずれも標準的な難易度である。
  3. エピジェネティックに関する問題。Ⅰはチョウの表現型に関する問題で、Ⅱはショウジョウバエのホメオティック変異体を扱った問題。後半は記号選択の実験考察であり、それほど難易度は高くなかったが、前半はイメージが上手くつくかがポイントになった。動物全般への広い興味がそのまま解答力につながる問題。

総評

動物についての実験考察が第1問、植物に関する第2問、進化・生態に関する第3問と問題傾向は変化していない。ただ、第1問のⅠ・Ⅱ、第2問のⅠ・Ⅱ、第3問のⅠは、最後の問題が記述問題になっている。考察の結果を自分で考えつかなければならず、「問題を利用した」解答が少し難しくなった。記述は2行から5行の間で、それほど長くないが、上記のように実験の考察結果を記述するものがメインとなった。考察の結論が記号選択であった問題が多かった昨年以前よりは、より考察力が要求されるものになった。第2問Eのように、教科書でほとんど触れられていない知識についての問題も存在するが、教科書レベルを超えることは少ない。
このレベルの大学を目指す生徒においては、今さら問題集レベルでの解法演習を語ることは必要としない。「思考力問題精講」(旺文社)などでの発展レベルの演習や、「全国大学入試問題正解」(旺文社)での網羅的な学習がメインになるが、それ以上に、最低新書レベルでの知識の習得が求められる。「エピジェネティック」「ゲノム編集」(ともに岩波新書)など生命科学についてのプラスアルファの知識を常日頃からインプットしておきたい。また、高1・2の生徒には、推薦入試の基準でもある「生物オリンピック」への挑戦を見越した専門レベルの学習も効果的である。その準備として、予選問題等での演習も基本的な計算や思考の訓練になるだろう。とにかく日本のトップの大学の入試である。不安がある状態では合格は難しいので、専門レベルまで習得し、余裕をもって受験に臨みたい。また、動物・植物・生態と満遍なく出題されるため、生物全般において「不安要素」をもたないことも必須となる。