東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 遺伝情報について。ニーレンバーグの実験 記号選択・理由記述・
計算
標準
2 ウニ・ショウジョウバエ・カエルの発生の比較 語句挿入・説明記述・
考察記述
標準
3 運動について 語句挿入・理由記述 標準
4 気孔について 語句挿入・理由記述・
考察記述
標準

問題分析

  1. 記号選択は非常に平易であるが、理由記述があまり見慣れていないものであったが故に少し苦労したかもしれない。ただ、題材は「問題集的」であり、見慣れないが故に時間を取られることはなかったと思われる。
  2. 記述問題が問3から続く構成になっており、少し苦労した印象を受ける。最初2つの記述は知識そのままのアウトプットで正答が可能であるが、後半は仕組みや役割についての説明が必要であった。ここも時間的に苦労することはなかったと思われる。
  3. 記述問題がここでも合否の鍵となる。熱中症という、見慣れているが発症の仕組みが曖昧であるもののメカニズムを問われている。解りそうでうまく書けない生徒も多かったと思われる。「短い医科歯科」といった構成になっている。
  4. 気孔の開閉についての実験考察問題であり、最初のリード文がうまく考察のヒントになっている。実験とリード文は「Ⅰ」と「Ⅱ」に分かれていただけにリード文がそのまま実験考察のヒントになるということに気が付くとそれほど難易度は高くなかったと思われる。

総評

 東京慈恵会医科大学の問題は、「問題集的」にある程度問題集の単元の順序で、他の単元を混ぜることなく、有名な実験や事象を扱ったものが多いのであるが、今年もその傾向は残っていた。しかし、複雑な計算や表の読み取り、あるいは塩基配列の読み取りなどが存在せず、理由記述や説明記述などが多くなり、上にも書いたように「短い医科歯科」的な部分も見られた。こうなると「時間的に大丈夫なようで実は時間的には厳しい」ということが起きる可能性があり、「気が付いたら時間がなくなっていて、記述をとりあえず…というレベルでしか書けなかった。」という受験生も多かったと思われる。
 昨年までの実験結果の表の読み取りや細かな計算がなくなったことで、千葉大学や東京医科歯科大などの問題傾向に慣れていた受験生は取り組みやすくなった反面、日本医科大などと併願する私大メインの生徒には少々解きづらい、そして時間配分の難しい問題になっただろう。国公立併願組と私立でここが第一志望である組が交錯するだけに、このような問題傾向の緩やかな変化が大きく合否に関わる可能性がある。
 それでも基本的には「問題集的」であるので、「理系標準問題集」(駿台文庫)などの標準的な問題集の完全な理解がまずは必要になってくる。ただ、今年は「プライマー配列の間違った塩基は細胞の機能に影響を与えない理由」や「乾球温度よりもWBGT(湿球黒球温度)の方が推奨される理由」など教科書や問題集でもなかなか知ることのできない「新書的」な知識も必要となっており、教養的なものも含めた総合的な生物の理解を進めていくことが必要である。
 並びや題材は問題集的とはいえ、毎年傾向が多少の変化を生じているのが慈恵の生物である。ただ、それでも少しずつ慶應や医科歯科などの教養を必要とする部分が顔をのぞかせているので、早い段階から問題だけでなく新書や参考書での知識や教養の習得を行うことが合格への近道になると思われる。