昭和大学
基本情報
試験時間:140分(数学または国語と合わせて)/問題数:大問 3題
分析担当
小出 信夫

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 文法・イディオム・語彙(15問) 選択式 やや難
2 読解(総合問題6問) 選択式と
記述式
標準
3 読解(総合問題5題) 選択式と
記述式
やや難

問題分析

  1. 文法8問、イディオム5問、語彙2問で構成。例年以上に文法問題が多かった。もっとも、その文法問題はすべて基本的なものであり、しかも過年度の傾向から仮定法と倒置形が出されたのは予測されたことである。実際に、近年だけでも、仮定法は2021年度Ⅰ期、2020年度Ⅰ期、2019年度Ⅱ期、2018年度Ⅰ期、2017年度Ⅱ期、2016年度Ⅱ期、2015年度Ⅰ期、2013年度Ⅰ期、 2011年度Ⅱ期、2010年度Ⅰ期で出題されている。 倒置形も2021年度Ⅰ期と2020年度Ⅰ期で出題されている。対照的に、語彙問題はcherrypicked「自分に都合の良いものだけを選び出した」など難しいものもあった。配点比率は30%ほどであろう。
  2. 「新生児の認知能力」に関する英文で、約1000語。問題構成は、アクセント1問、前置詞の空所補充1問(枝問6問)、語句の空所補充2問、説明1問、下線部和訳1問。昨年度までと比べた大きな変化は、イラストが用いられたことである。これは昭和の問題ではかつてなかったことである。また、実験手順やその結果について記述する問題も初めての出題である。もっとも、この類いの記述問題は、医学部ではこれまでに、聖マリアンナ(2018、2014)、藤田医科(2012)、大阪市立(2007)、岐阜(2011)、九州(2012)、神戸(2011)、信州(2021、2020)、浜松医科(2018)、広島(2012)、福島県立医(2021、2020、2015)、三重(2011)が出題している。この様な傾向は、受験者の自然科学的な思考能力を問うものだと言える。なお、2019年度以前に出されていたアクセント問題が本問に織り込まれていたこと、また内容一致問題が出題されなかったことも特徴的である。配点比率は35%ほどであろう。
  3. 「不確定なことから科学的発見が生まれる」という科学方法論に関する一論で、約500語。問題構成は、段落整序1問、語句の空所補充1問(枝問2問)、語彙1問、整序英作1問、不要語摘出1問、論旨要約(100字)1問となっている。このうち、段落整序は初めての出題であるが、整序英作はこれまでにも出題されていた。なお、主題の科学的発見の方法に関しては、医学部に限って言えば、埼玉医科(2020)、旭川医科(2012)、東北(2012)、奈良県立医科(2008)などで出題されている。その意味では珍しい出題でないが、本問は宇宙人が地球のサッカー試合を見るという最初の場面設定が意外すぎて読みにくかったであろう。さらに、要約問題は昨年度が80字だったので、文字数が増えたことによる答えにくさもあったであろう。以上、本問は大問2より読解文の字数も問題量も少ないが、要約問題の配点比率が高いことを考え合わせると、全体に占める配点比率は同じく35%ほどであろう。

総評

「文法・語法」1題と「読解」2題という構成は昨年度と同じ。もっとも、大問1が文法に比重を移したことは注目すべきである。しかし、それは積極的な意味においてではない。およそ現在の英語教育全体が形式論理的な文法からより実用性のある語彙やイディオムに重点を移している流れに逆行するからである。およそ旧設医科大学で文法固有の問題を出しているのは、関東圏の私立医学部では本学を除いて東医と東邦しかない。慶應、慈恵、日医、順天など名だたる旧設医学部だけでなく、共通テストでさえ文法問題を出題しなくなっている現状、旧来の思考様式に拘り続けているとしか思えない。今後は、時代が求める「多読的発想」という視点を期待したい。もっとも、それとは対照的に、第2問と第3問で和訳問題や説明問題という形で記述量が増えたことは評価に値する。特に注目すべきは、最後の論旨要約問題である。100字という指定字数で論旨をまとめさせるのは、日本語 の「言語運用能力」を問うものとして積極的評価に値する。それはともかく、今回の出題内容は本年度Ⅱ期の問題構成を予測させるものである。特に記述式の読解問題への対処が必要とされる所以である。