順天堂大学
基本情報
試験時間:2科目120分/問題数:大問4題
分析担当
中村 達郎

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
第1問 小問集合、
剛体のつり合い、単振動、
定常波、導体棒に生じる誘導起電力、
光電効果
選択式 易~標準
第2問 コンデンサーを含む回路 選択式 標準
第3問 気体の状態変化
(定圧変化、断熱変化)
選択式 標準
力学(単振動、円運動) 記述式 やや易

問題分析

  1. 【第1問】小問集合全体を通してどこに着眼するかを問う良問。物理現象に対する理解があれば面倒な計算をする必要はなく、短時間で処理できる問題ばかりであった。問1では水平方向の力のみを問われていることに注目してほしい。剛体の力のつり合いの式をすべて立式するのではなく、必要最小限の操作で解答してほしい。問2は単振動における復元力、また復元力による位置エネルギーを理解していれば難しくない。問3は定常波における節の位置さえわかれば3択まで絞り込みは容易で、あとは固定端反射、もしくは腹の位置の動きを見ればよい。問4は電流が0であることを見抜くこと。抵抗などの余計な情報に惑わされないように。問5は設問の仕方がやや見慣れなかったかもしれないが、結局は仕事関数。阻止電圧の意味がわかっているかを問うている。

    【第2問】コンデンサーに誘電体を挿入するお馴染みの問題。比誘電率が電荷密度の比を表していることがわかっていれば手早く解答していけるだろう。スイッチが開いているか、閉じているか、その場合何が固定されていて、どの値が変化に比例、または反比例しているのか洞察できれば計算は簡単になる。ただ(c)のジュール熱を求める問題は見慣れなかったかもしれない。選択肢にRが使われているのだから電流を求めるのだろう、と見切り発車でも解答できる。ここでは電流は一定値である。

    【第3問】残り時間が気になる中で、冷静に状態変化を追えたか?問題文を飛ばさずに読めたか?Ⅰ‐第2問と並び合否を左右する問題だったかもしれない。問3では断熱変化を扱っている。断熱変化におけるポアソンの法則を導出した経験がある人には有利な問題だった。「微小量の積は無視してよい」などのただし書きを読み飛ばしていると、選択肢を前に途方に暮れることになる。
  2. 簡単な問題であったとは思う。ただし、記述で減点される人も多かったのではないか。たとえば問1。単振り子の周期を導出せよという問題だったが、教科書にあるように記述できただろうか。普段から運動方程式を用いて周期を導出していれば良いが、そうでなく公式に代入という勉強をしている人には厳しかったかもしれない。最後の問3では突然前問とのつながりが途切れ、いたってシンプルな問題になった。サービスかもしれない。時間の関係で飛ばした人は後で見返してがっかりしただろう。

総評

 見直してみて難しい、という問題はない。ただし、「時間さえあれば」と嘆いた人も多いのではないか。この試験ではその「時間」がテーマであり、出題者も意図していると思われる。上記の難易度には「易~標準」と記したが、本番の試験時間内で、と考えると「標準~やや難」と感じた人もいただろう。時間内で収まる人と収まらない人で相当な点数差が出たと思われる。では、いかに速く解くか。物理において「速く解く」ということは計算スピードを意味しない。複雑に見える現象を単純化してとらえる視点をもつことが重要。そのためには定義を理解し、物理用語に慣れ、公式の導出過程を理解し、ビジュアルイメージを高めるという過程が大切。少し難度の高い問題に触れ、「復元力による位置エネルギー」のような抽象度の高い考え方を身につけることも求められる。一般に問題集の解答は杓子定規なものが多い。演習においては、単に「合っていた」で満足することなく、問題集の解答以上にもっと速く解けないかを探求する姿勢がほしい。