千葉大学
基本情報
試験時間:2科目100分/問題数:大問3題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 コロナウィルスと免疫・
PCR法
語句挿入・説明記述・
理由記述
やや易
2 アグロバクテリウムによる
遺伝子導入とRNA干渉
語句挿入・説明記述
・記号選択
標準
3 血糖値調節の仕組み 語句記述・説明記述・
理由記述
標準

問題分析

  1. コロナウィルスのワクチンからPCR法、サンガー法へと発展させた問題。説明記述2題と考察・理由記述1題があるので時間的にはやや苦しいが、問題自体は至って平易。いわゆる「流行り」の単元でもあるので、ここはしっかりと正解したい。
  2. アグロバクテリウムによる遺伝子導入とRNA干渉についての問題。説明記述が2題で280字とここでもやや記述が多めになっているが、問題自体は「問題集的」。実験の考察の形になっているので難しい印象を受けるが、問われていることは標準的であり、問題文も短いので落ち着いて臨みたい。RNA干渉については問4だけで触れられているために、仮にイメージできなかったとしても大きなダメージはない。このように千葉大学は大問全体に響くキーワードが少ないのが特徴的である。
  3. 糖の代謝にかかわる酵素と血糖値調節についての問題。ホルモンの部分はきわめて平易であるが、糖代謝と血糖値調節については実験考察という形になっているが、少し「教養」が関わってくる。グラフの読み取りからも解答できる問6ではあるが、「教養」や「知識」、あるいは同様の問題に触れたことのあるという「記憶」があればうまく正答にたどり着けた。ここでも各問ごとに重要なキーワードが異なり、一問で何もイメージできなくても残りの問題をあきらめないことがポイントになる。

総評

 50字から160字までの記述が8題と昨年に比べて大きく記述量が増加した。その分、計算問題や遺伝問題などがなくなり、難易度は大きく変わらなかったが、少し時間での不安が見られる受験生もいたと思われる。千葉大学は5つの大問から医学部は3問を指定する仕組みであり、それ故に生態系、個体群、進化・系統、植物などの分野は大きく出題頻度が低下しており、遺伝子、細胞、代謝、動物生理、発生に集中している。また、「問題集的」な実験や問題がほとんどであり、問題文も短いことから、該当範囲に対して問題集で実験を伴ったものをどこまでやりこんだかがそのまま合否を決めることになる。
 「生物問題集合格177問」(東進ブックス)などいかにも「問題集的」な問題を集めたものをきちんとやりこむことがまず必要になってくる。「見たことがある」ことが何よりも大事になるので問題パターンごとにしっかりと覚えこんでいくことが求められる。100字前後の説明記述に対応するために、「理系標準問題集」(駿台文庫)や「体系生物」(教学社)などを2周目に取り入れるなどの工夫を行って、記述と問題パターンのインプットに集中したい。
 記述は説明記述が中心であるものの考察記述もいくつか見られ、その考察部分が「差のつく」部分である。大問3の分析でも触れたが、千葉大学での考察のポイントは「教養」と「記憶」である。問題が問題集で扱われるものを大きく外れないだけに「知っている」ことが何よりものアドバンテージになる。「考える」のではなく「思い出す」ことで考察についても対応できる「教養」と「記憶」を持つことで時間的なアドバンテージも得られる。生物での「スピード」は化学または物理に割ける時間も左右する。それだけに、「スピード」のもとになる基本的な問題集の「やりこみ」は何よりも大切になってくる。
 また、以前は多かった「大問の最後の問題が大問全体のまとめ」でその問題を解いているうちにそれ以前の問題の意図が整頓される慶應義塾大学や東京大学でも見られる形ではなかったものの、このような形式も再び出題される可能性はあるので、うまく「全体の流れ」を意識して解いていきたい。