東京慈恵会医科大学
基本情報
試験時間:60分(2科目120分)/問題数:大問4題
分析担当
吉山 茂

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
1 視覚器のつくりと発生について 語句挿入・記述・
図示
やや易
2 哺乳類による脂肪量調節について 記述・計算・
記号選択
やや易
3 一遺伝子一酵素説について 語句挿入・記述・計算 標準
4 バイオームについて 語句挿入・計算・
記号選択
やや易

問題分析

  1. 記述は「具体的に述べよ」「理由を述べよ」と字数制限がないものであった。前者の解答方法で少々てこずるが、他は基本的な問題が続く。ただ、これは「共通テスト」的な観点の文字化であり、私立上位や国公立医学部を意識している生徒は既に十分に学習を行っているはず。また、簡単ではあるが、グラフの描図があった。
  2. 計算はβ酸化によるエネルギー生成を考える問題。近年、他大学でも出題されたことがあり、一見複雑であるが、標準的。記述問題も基本的なものであり、標準的な問題が続いた。計算以外ではきちんと得点しておきたい。
  3. 減数分裂をおこなう利点を問う問題や変異を見いだせない理由を問う問題は、「見てわかる」「問題集にそのままある」ものではなく少々思いつくことが大変であるが、他は「問題集」的であり、遺伝計算も「1倍体」であることに注意すればそれほど難解ではない。ただ、他の大問が平易であったことを考えれば、この問題での成否が合否にそのままつながるであろう。
  4. 基本的なバイオームの問題。記号選択は「すべて選べ」であるので、正確な知識の把握が必要。計算問題は本年多くの大学で出題された物質収支とエネルギー効率についてであるので、私立を複数受験したグループはしっかりと取れていたであろう。

総評

 東京慈恵会医科大学の入試問題は「問題集的」な問題が、「問題集順」に並んでおり、実験考察や塩基配列の読み取りが複雑でなければ比較的スムーズに解き進めることができる。本年は「スムーズさ」を止める材料がなく、かなり平易な年度であったといえる。ただ、例年は前半の細胞・代謝、あるいは遺伝子の分野で複雑な実験や時間のかかる塩基配列の読み取りなどがあるので、その準備は常に必要である。本年度は前半が視覚器、レプチンといった問題集で多くみられるテーマと切り口で、一遺伝子一酵素は新課程以降ややマイナーになってきたが「古典的」なテーマであり、バイオームは進化の計算や考察が昨年出題されたことにより予想通りとなった。
 本年のようにスムーズに解ける場合には、生物選択は大きな武器になる。「2科目120分」で設定されているが、早ければ40分程度で解ける問題である。そうすると化学に多く時間を費やすことができ、化学でのアドバンテージも得ることができる。生物は「時間内に高得点を取る」が目標ではなく、「時間を余らせて化学に充てる」ことで、理科2科目の総合点を最大化することが目標になる。そこまでイメージして、「解けるようになる」だけでなく「素早く解けるようになる」訓練を積んでおくことも理科では必要とされる資質になる。
 「問題集的」である分、「理系標準問題集」(駿台文庫)など標準的な問題集を固めることが必須となる。本年のような「実験を伴わない」考察記述は東京医科歯科大受験組などは訓練されており、かつ、素早く記述できるようになっているので、それを想定すると、記述は特に力を入れて強化しておきたい。