昭和大学
基本情報
英語と合わせて140分/問題数:大問2題
分析担当
首藤 卓哉

出題内容・難易度

大問 出題内容 出題形式 難易度
村上靖彦
『交わらないリズム―出会いとすれ違いの現象学』
漢字(読み・書き)、選択式、記述式 やや難
イマニュエル・ウォーラーステイン著
山下範久監訳 滝口良・山下範久訳
『知の不確実性―「史的社会科学」への誘い』
選択式、記述式 やや難

問題分析

  1. 設問は全部で16問と昨年と同数。出典のジャンルも一昨年、昨年と三年連続で哲学であった。文章の内容は昨年と比べてやや易化しているものの、哲学的文章ゆえの語彙の運用などがあり、哲学の文章読解に慣れることが必須である。記述問題の設問数は減少したものの、1問当たりの字数が増え、70字以上80字以内の問題が2問、40字以上50字以内の問題が1問であった。また、去年は10問あった漢字の書き取りが、今年は書き3問、読み2問とかなりの易化となった。ただし、読みの問題自体は漢字検定準一級レベルであり油断は禁物である。
  2. 設問は全部で12問あり、昨年の1.5倍の出題数となっている。一昨年は6問、昨年は8問であったので、大問二に関しては増加傾向である。記述問題の出題方式は例年と同様で、字数制限ではなく指定の行数(2~3行)以内で記述する方式である。ただし、昨年は4問中3問が1行、1問が2行の計5行の記述であったのに対し、今年は、問題数は5問に増え、3行以内が1問、残り4問は2行以内の計11行と、要求される分量が昨年の2倍以上に増えており、これは難化したと言える。

総評

 一昨年は大問4題、昨年は大問3題、本年度は大問2題と、大問数が減少している。設問数も28問と昨年よりも10問も減少している。大問数が減ったことは、設問数が減り、解く時間が少なくて済むだけでなく、問題文を読む時間が削減されるのも大きな変化である。これは英語の入試問題と一緒に140分で解く際のペース配分を考慮しなければならないことを踏まえると易化したと言える。しかしながら、問題分析でも触れたように、大問二では要求される記述の量が顕著に増え、総評としては単純に易化したというわけではない。
 大問一は約5000字の論説文で内容は、看護などの医療従事者と患者やその家族との関係性を哲学的観点から述べたものであった。昨年も大問三で医系テーマ(「抗菌薬の処方問題」「EBM」など)の題材の文章が出題されたので、やはり本学の攻略には医系テーマへの知識が重要である。また、小論文ではあるが、過去に「応召義務と医師の労働問題」や「オンコセルカ症をはじめとする熱帯病の制圧問題」、「AMR(薬剤耐性)とワンヘルスアプローチ」など、他大学よりも一歩踏み込んだ医系テーマが出題されているので、合格には避けて通れない道である。よって、本学志望者は普段から医系テーマについて学習しておくことが、国語や小論文の攻略の上で肝要である。
 大問二は約4000字の論説文で、昨年の3000字弱の分量と比べて大幅に増加している。また、繰り返しになるが、問題数も増え、記述の分量も増加している。これは昨年あった大問三が削除された影響であろう。文章のテーマは科学的アプローチを題材にしたもので、一般的な論説文の二元論を扱った問題を解いたことがあれば、要旨は比較的簡単に読解できるものであった。ただし、設問が記述中心であるため、その練習が必須である。本学の国語の入試が3年目で過去問が少ない現状、問題の性質が多少違うものの、東京大学や京都大学の現代文の問題が練習になるので、それを用いて特訓を重ねるのも方法の一つである。
 冒頭で触れたように、大問数や設問数が減少傾向にあり、また英語も問題構成はほぼ同じながらも、昨年と比較して本年度は本文の要旨を記述する問題がなかったので、従来よりも時間的余裕ができる内容となっている。ここに作問における試行錯誤が窺えるが、これが完成形と安心せず、来年は大問数が増える可能性も十分に考えられるので、しっかりと対策を講じておくことが重要である。