講演会レポート

2025.9.30
2026年度中学入試の動向を大胆予測
中学入試 志望校必勝ガイダンス 森上展安氏 講演レポート
TOMAS主催のイベント「中学入試 志望校必勝ガイダンス」が、2025年8月31日(日)、ホテルメトロポリタン(池袋)にて開催されました。
この記事では、森上教育研究所 所長の森上展安氏による講演「2026年度入試展望――受験者動向予測」の内容を採録として紹介します。
本講演では、2025年度の中学入試や7月の首都圏4大模試の結果から、2026年度入試の動向を注目校ごとに分析。小6受験生だけでなく小4・5の受験生をもつ保護者にも必見の内容となりました。
講演者
森上教育研究所 所長
森上 展安氏
早稲田大学法学部卒業。中学受験に関するリサーチや私立中高一貫校経営のコンサルティングを行う。学校情報に精通し、『入りやすくてお得な学校』(ダイヤモンド社)など著書多数。

INDEX
2025年度中学入試概況 高倍率の厳しい戦いだった
2025年度入試の受験者数は52,300人、受験率は18.10%と、高い水準をキープしていました。また特筆すべき点として、倍率が高いことが挙げられます。偏差値40以下の学校を除けば多くの学校が2倍以上、3倍となる学校もあり、かなり厳しい入試でした。
7月の首都圏4大模試で見ると、難関校の志望者数は減少
続いて、2025年7月の首都圏4大模試のデータを分析していきます。
偏差値55以上の難関校について、昨年から志望者数が2~4%ほど減少しているとのこと(55より下の学校については、いずれも増加)。これは珍しい現象で、難関校を志望する方にとってはとてもチャンスです。

首都圏4大模試(7月)の偏差値帯別志望者数合計の表。偏差値60~55のC帯以上の学校で、志望者数が減少している。
この理由として、1つは偏差値65以上の学校が増えており志望者が分散していること、そしてもう1つは問題が難しくなっていることがあり、後者の方が大きい要因ではないか、と考えられます。
近年の難関校の問題は非常に難しく、時間が限られる中であれだけの問題を解くというのは、かなり習熟していないと厳しいでしょう。
人気校の理由は? 大学進学実績・国際・医学系・改称・共学化……
志望者数や倍率に関連して、「人気校」はなぜ人気なのでしょうか? 以下の4点のいずれかを満たす学校が人気になる傾向があります。
- ①大学進学実績が好調
- ②国際系・医学系コースの充実
- ③改称・共学化・新コース・新校舎
- ④偏差値以外の魅力
以下、それぞれの詳細について見ていきます。
①大学進学実績が好調
東大の合格実績が2桁の学校は人気が出やすい傾向にあります。常連校を除くと、2025年度では、広尾学園中、東京都市大付中、城北中が東大合格者数2桁を達成しているので、人気が出るのではないかと思われます。

人気に直結する東大への合格実績。その一方で、早慶の実績は影響しないことが多い。
②国際系・医学系コースの充実
国際系や医学系は人気が高く、コースを設置している学校が人気になるケースがあります。
国際系のコースをもつ学校として、広尾学園中・広尾小石川中などが挙げられます。医学系は女子を中心に人気が高く、例として、2026年度から北里大学の系列校になる順天中や、順天堂大学系属理数インター中などがあります。
③改称・共学化・新コース・新校舎
大きな変化がある学校に、受験生が集まる傾向にあります。2024年に新校舎が完成した学校として、開成中・早稲田中などが該当します。
また、2026年度から新たに明治大学の付属校となる日本学園中(新名称:明治大学付属世田谷中)、2026年度新設の明星Institution中等教育部も該当し、人気になると思われます。
④偏差値以外の魅力
偏差値だけでなく、それ以外の魅力がある学校は人気が出やすく、大きな要素として立地が挙げられます。特に湾岸地区・世田谷区・文京区にある学校は人気になる傾向があります。
日程別にみる、2026年度首都圏入試の動向予測
続いて、いよいよ2026年度入試の動向予測です。ここからは、埼玉入試、千葉入試、東京・神奈川入試、と日程別に、詳細な分析内容をお伝えします。

講演中、資料を基に真剣に語る森上氏。
【埼玉入試】開智所沢・栄東が人気。栄東は、他校が第1志望の受験生も受験推奨!
栄東中・開智所沢中の人気が高く、1/10は開智所沢を受験、1/11は栄東を受験、という傾向が高まっています。特に栄東の入試では良問が多いので、他校を第1志望とする受験生も受験するとよいでしょう。ただし、近年は2倍以上の倍率になることもあり、注意が必要です。
そのほかの人気校としては、以下が挙げられます。
- 女子校で医進コースのある淑徳与野中
- 立地がよい大宮開成中
- 理系進学率が伸びている立教新座中
【千葉入試】難関・渋幕の人気は衰えず。東邦大東邦は医学部志望生に人気
千葉県は全体的に倍率が高く、その中でも渋谷教育幕張中が特に難関です。市川中と東邦大東邦中が比較的受験しやすいと思われます。
特に、東邦大東邦中は良問が出題されるため、栄東中同様、2月に第1志望校の試験を控えた受験生も、受験するとよいでしょう。
埼玉入試と比較して、千葉入試はその学校を第1志望とする受験生の割合が高いことが特徴です。特に東邦大東邦中は医学部志望の受験生が多く、人気があるようです。
【東京・神奈川入試(2/1・男子)】麻布はチャンス!? 一方、早稲田が人気に
ここからは、東京・神奈川入試について見ていきます。
まず、2/1の男子校については、2025年7月模試での志願者数が前年7月に比べて減少した学校が多く、開成中は98%、筑波大駒場中が96%、そして麻布中が88%でした。
麻布中の大幅な減少は、2024年度に東大合格者数が減少したことが原因と思われます。麻布中の2025年度入試の実倍率は2.2倍でしたが、2026年度は2.0倍程度までになる可能性もあると考えています。
また、注目すべき点として、早稲田中の躍進が挙げられます。例年、2/1の男子校の中では4番目程度の受験者数ですが、2025年度7月模試での志願者数は開成に次ぐ2番目でした。これは、新校舎が2024年に完成したこと、早稲田大だけでなく他大学にも進学しやすいことが受験生に評価されたのではないかと分析しています。
そのほかの注目校は以下のとおりです。
- 武蔵中……2025年度志望者数が前年比103%と、御三家の中では唯一増加している。
- 駒場東邦中……志願者数前年比97%とやや減少。東大合格者数が不調なことに加え、聖光学院中に受験生が流れて行ってしまっていると分析。
- 海城中・本郷中……どちらも志願者数が前年比微増で安定。本郷中は2/2の最大受験者数なこともあり、2/1の人気も上がってきていると思われる。
【東京・神奈川入試(2/1・女子)】女子学院の試験日変更が併願に影響
2/1の女子校については、例年2/1が試験日だった女子学院中や立教女学院中などが2/2に移動になるなど、日程の変更が多くあります。
この影響として、これまでできなかった併願ができるようになります。例えば、2/1に鴎友女子学園中や吉祥女子中を受験し、2/2に女子学院中を受験する、といった併願スタイルです。
また、洗足学園中は2/5の試験を廃止した代わりに2/1の定員を増やしました。ただその分受験者数も多いですし、試験自体も厳しいですから、注意が必要です。

2026年度の主な入試日程変更をまとめた表。いわゆる「サンデーショック」で日程が変更になる女子校がある。
そのほか、以下の学校が人気を集めることが予測されます。
- 雙葉中……これまでほかの御三家中と比べて人気が控えめだったが、近年人気を増しており、入試問題も比較的易しい。
- フェリス女学院中……ミッションスクールだが、2/1のまま入試日程を変更しない。
- 頌栄女子学院中……2/5の入試について、洗足学園中が同日の入試を廃止した影響で、受験者が増える可能性がある。また、2/1の入試も、同日の女子学院中が移動するため、(プロテスタント校として東京では唯一の2/1入試なこともあり)人気になると思われる。
- 山脇学園中……2025年度7月模試での志願者数が前年比149%。アクセスが良いこと、理系コースがあることが人気の要因か。
- 香蘭中・横浜共立中……2/2に試験日を変更した立教女学院中と併願ができる。
総じて、例年とは異なる併願パターンになると思われるため、注意が必要です。
【東京・神奈川入試(2/1・共学)】早実・渋渋の女子はかなりの受験者数に!
2/1の早稲田実業中・渋谷教育渋谷中は、2025年度7月模試での志望者数が、どちらも女子のみ増加しています。これは、女子学院中が2/2に試験日を移動する影響ではないかと考えられます。
一方で、広尾学園中や芝浦工大附中も人気ではあるが、早実中・渋渋中に比べると抑えめになると思われます。
【東京・神奈川入試(2/2)】聖光・栄光・豊島岡など難関校は志望者減少傾向に
2/2入試の、まずは神奈川の男子校についてです。聖光学院中・栄光学園中の2025年度7月模試の志望者数は前年と比べて減少傾向にあります。特に聖光学院中は前年比90%程度の志望者数だったため、この傾向が本番の入試まで続くようであれば、チャンスといえるでしょう。
2025年度7月模試の志望者数が特に減少した学校として、豊島岡女子学園中が挙げられます。前年比志望者数は実に71%で、難関校志望者が減少している影響と、女子学院中の日程変更の影響を受けていると思われます。
そのほか、洗足学園中や渋谷教育渋谷中の2025年7月模試での志願者は減少しており、これらも女子学院中の日程変更の影響なのではと考えられます。
【東京・神奈川入試(2/3)】筑駒・浅野は微減。筑附が増加傾向
2025年度7月模試での志望者数は、筑波大駒場中が前年比96%、浅野中が前年比95%と、若干の減少傾向にあります。
注目したいのは筑波大附中で、2025年度7月模試での志望者数は、男子が前年比119%、女子が前年比114%と増加しています。この背景には、都立の一貫校(都立小石川中等教育学校など)の人気がやや落ちてきていることがあり、国立の学校の復調の兆しなのではないかと考えられます。
【東京・神奈川入試(早慶・MARCH附属校)】軒並み高倍率。理系志望は要検討
まず、附属校全体の傾向として、理系志望者が少ないことが挙げられます。慶應普通部で2割程度、早高院で3~4割程度なのだそう。一般的な進学校は文系と理系が半々程度とのことで、留意する必要があります。この理由は、もともと伝統校は文系の気質が強い(早稲田大の政治経済学部・中央大の法学部など)ためです。
入試に目を向けると、附属校は倍率が高く、2025年度入試の実倍率は多くの学校が3倍以上でした。特に女子の倍率が高くなる傾向にあります。これはそもそも受験全体として高校受験は枠が少なく、特に女子の枠が少ないため、中学受験に人気が集中しているということが理由の一つではないでしょうか。

中学入試 志望校必勝ガイダンスの会場のようす。親子で真剣に聞き入るご家族が多かった。
受験生へのアドバイス・メッセージ……「負け方」も大切に
最後に、受験生や保護者へのアドバイス・メッセージをお伝えします。
残りの5カ月は、凸凹の「凹」の穴埋めを重視して
この夏はとても暑く、体調管理も大変でしたから、学習の中で、どうしても「凸凹」ができてしまったと思います。これからの2学期では、この「凹」の穴埋めをするように意識していくことがよいでしょう。きちんと穴を埋めていけば、入試はそれほど水物ではありません。
一方で、難関校についてはそれだけでは足りません。「合格するぞ」と高い意志を持つことが重要です。
「負け方」と「次につなげる」を大切にしよう
中学受験では、勝ち方だけでなく「負け方」も大切です。また、大学受験など「次につなげていく」ことも大切です。
「負け方」とは、併願戦略のこと。つまり、「ここへ入学できればよい」という併願校を、保護者が見つけておくことが大切と言えるでしょう。
「次につなげる」については、たとえば同じような大学合格率でも、偏差値が10違う、という学校も存在しています。志望校を考える際には大学受験も視野に入れた研究が必要です。
まとめ:
今回の講演では、2026年度入試に向けた最新の動向と、受験生・保護者が今後意識すべきポイントが多角的に語られました。入試日程の変化や志望者数の推移、人気校の背景など、具体的なデータとともに示された分析は、これからの受験戦略を立てるうえで大きなヒントとなるはずです。
とはいえ、さまざまな情報を自分のケースにどのように落とし込めばよいのかは、なかなか判断が難しいもの。志望校の選び方や併願戦略、残りの期間での学習の進め方など、個別の状況に応じたアドバイスが欲しい方も多いのではないでしょうか。
スペックTOMASでは、難関中学受験を熟知したプロによる個別相談を受け付けています。お子様の学力や志望校、模試結果などをもとに、最適な受験戦略をご提案します。ぜひ一度ご相談ください。