2023.5.29

学校行事シリーズ

豊島岡女子の全校運針記録会

無我無心の境地をめざす
毎朝の「運針」の集大成

森上教育研究所 所長 森上展安氏

創立以来の伝統である「運針」

 2022年度から高校募集を止め、完全中高一貫校となった豊島岡女子学園。この学校の最大の取り組みは、なんといっても毎朝の「運針」というべきだろう。8時10分から8時15分の5分間集中し、心を落ち着かせる習慣となっているようだ。なにしろ、9月には「全校運針記録会」もあり、5分間で運針の長さと針目の美しさを競うというから一大行事である。さすがに中学生は、年の功で中3の勝利が多いが、高校になると下克上もあると聞く。

さまざまな学校行事とユニークな部活動

 最寄り駅は東池袋で、豊島区役所の高層ビルのそびえ立つ都心の立地だが、運動会は埼玉県に所有する入間グランドで行っている。文化祭は「桃李祭」という名称で、クラブ活動の発表の場となっている。面白いのは「桃李連」という全国に3つしかない阿波踊りの部があること。自他ともに認める万事真面目な学風だけに特筆しておきたい。特筆といえば、やはりコーラス部も忘れてはならない。全国合唱コンクールの金賞・銀賞等の常連だ。部員もおそらく校内最大と思われる。
 修学旅行は、中3は京都・奈良方面、高2は九州・中国方面で行われ、中2は東北で宿泊研修がある。この辺はクラシックな定番行事だ。そのほか、7月には学校の施設で「小諸林間学校」が開催される。

女子御三家にはない特徴とは

 女子御三家にはなく豊島岡女子にある行事は、おそらく2つあり、1つは夏期講習だろう。ただし必須ではなく、中3から高3の希望者対象である。もう1つは授業参観日 (中1から高1) があること。豊島岡女子らしいのは、夏期講習のような勉強の行事が多く、たとえば英語弁論大会 (中学)、英語ディベート大会 (高1) がある。
 授業では、総合的な探究の時間「科学探究基礎Ⅰ(高1)」「科学探究Ⅱ・総合探究Ⅱ(高2)」があり、その発表の場としてAcademic Dayなどがある。また、中学の希望者は「探究ベーシック」という探究活動 (課外) に参加できる。歌舞伎鑑賞会 (中1・中2)、能楽鑑賞会 (希望者) などの伝統文化もカバーしていて、参加必須ではなく、希望制を取り入れているところも女子御三家との違いだ。
 学校は5時半にロックダウンされ、塾銀座・池袋の街に生徒は散っていくが、かつて「女巣鴨」と呼ばれただけあって予復習の宿題が多く出される。あるOGは「向上心」が豊島岡生に似つかわしい気質だとコメントした。そのことは、池袋を歩く豊島岡女子のブランド力向上に、鮮やかに貢献している。