2022.8.19

学校行事シリーズ

開成中の運動会

開成といえば運動会
上下の結束を強める伝統行事

森上教育研究所 所長 森上展安氏

終わった翌日から来年度に向けて走り出す

 開成は、昨年創立150周年を迎えた。新校舎も完成し、時あたかも昨秋OBの岸田氏が総理大臣に就任するという巡り合わせになった。誠に賑々しい。
 その開成が自他共に認める注目の行事が運動会である。例年、5月第2日曜日に行われ、運動会が終わったまさにその翌日から来年度の運動会に向けて走り出すのだというから、文字通り1年がかりである。
 そのための組織があって運動会準備委員会略して「運準」というらしい。
 この「運準」と「組」、そして「審判」に大きく組織が3つできる。組は高校が8クラスそのまま。中学は7クラスのため1クラスの中を8つに分けて高校の8クラスの下につける。八色に色分けされての対抗戦。さらに「組」の中でも応援歌を制作するエール係、在校生の応援席の上に掲げる巨大絵を制作するアーチ係、組のパンフレットを作成する庶務係などと担当が分かれる。

一部のスターだけではなく、一人ひとりに活躍の場

 なかでも運準は大会運営の要で、怪我対応や最近はインターネット速報なども手掛けるらしい。最大の見せ場の棒倒しの大道具の係りでもある。どうやらこの運準の役員になることが、開成という学校でのヒエラルキーの一部を構成するらしく、その役員に先輩から指名されるかどうかが極めて重要であるらしい。
 また「組」が、アーチ、エール、庶務などと分かれていて、いわゆる文弱の徒にも活躍の場が与えられている。そこが素晴らしい。応援歌の作詞作曲、CD作り、そのデザイン装丁等を見れば、なるほど相当な出来栄えなのだ。
 運動の得意な一部のスターだけが楽しむのではなく、生徒一人ひとりが、何らかの形で活躍できるようにできている。まさに1年がかりだけのことはある。
 さらに、上記の3つの組織である組・運準・審判などを統括する「審議会」という、いわば国会にあたる会があるそうで、ここで様々な案件を揉むらしい。

思春期の6年間で得られた結束は卒業後も続く

 開成を卒業したら卒業したで年2回の機関誌が配送されるが、そればかりでなく地区ごとに同期の親睦誌のようなものもあって、何かと縦のつながりが強固で結束が固い。 ちなみに文化祭は、開成にあっては運動会ほどの位置づけではないようで、内外ともさほど話題に上らない。麻布が文化祭の奇抜さや女子生徒の参加者の多さなど、もっぱら文化祭に話題が集まるのと対照的だ。
 男子中等教育は思春期を共にする得難い6年間の時空。小学生のような男子が大学生のような高校生にもまれて6年間を共にする。
 文字通りその1年1年を一丸となってことをなす経験は得難いものがあるだろう。