2022.6.7

第 17 回

VS 開成

私立男子校“東西の雄”
進路からわかる
共通点とは?
圧倒的な東大合格率を誇る
両校の特長

森上教育研究所 所長 森上展安氏

東大合格者で見る両校の立ち位置

 灘も開成も言うまでもなく、生徒数に対する東大合格者の比率1位、2位を争う学校として長らく記憶されており、近年は1位が開成、2位が灘で定着している。また、最難関と考えられてきた東大理Ⅲについては灘が常にリードしてきたのだが、実は今春、女子校としては初めて桜蔭が灘を抜き、13名の合格者を出して1位となった。そのため灘と開成は2位3位ということになり、これは両校とも桜蔭の後塵を拝したと言うべき歴史的な変化となった。そのことについては本稿の主たるテーマではないのでこれ以上触れないが、ただ一言申し添えれば、これは近年の私大医学部入試における男子偏重が是正された事態を受け、改めて女子の医学部志向が強まった結果と少なくとも筆者は受け止めている。

共通点は“安定感”

 東大理Ⅲの合格者数で桜蔭に抜かれたとはいえ、男子受験生を持つ保護者としては、我が子が灘でも開成でも入ろうものならまず肩の荷を半分はおろせる、というものだろう。というのも、例えばこれが同じ位優秀な生徒が多いとされる筑駒、麻布、武蔵などと比べた場合、とんでもない進路をとる割合が極めて少ない、そういう校風だと言えるからだ。筑駒にしても麻布にしてもそして武蔵にしても、大学に進学しない、高校で中退する、卒業したもののどこにも所属しない、などということは少ないけれどもたまにあること。理解のある懐の深い親の場合はそれもありと言うことであろうが、たいていの親にとってみるとそうしたイレギュラーな進路は一種の事故のようなものであり、できることなら事故率は高くないに越したことはないだろう。これは欧米でも知られた事実だが、一般的に女子よりも男子の方がそうしたイレギュラーな進路をとるケースは多く、男子難関校といえどもそれが世間並みに生じることは否定できない。しかし、灘と開成においてはそうしたことはあまり耳にしない。その背景には、言い方はやや皮肉に聞こえるかもしれないが、「現世利益追求型」とも言うべき両校の校風によるところがあるのだろう。俗な言い方になるが、両校の生徒はガッチリしているタイプがほとんどで、仕事を頼めば期待以上の成果が見込めるようなところがある。

土地柄における相違点

 両校とも教員の優秀さには定評がある。違いはおそらく生涯年収で、開成の教員の給与額は他を圧して高いので、そこは土地柄というべきだろう。土地柄ということで言えば、灘には京大進学者が一定程度いることも指摘しておきたい。