2022.2.7

第 14 回

巣鴨 VS 世田谷学園

競い合う中堅男子校
算数1科目入試から見る
現在の立ち位置
人気を集める2校の
共通点と相違点

森上教育研究所 所長 森上展安氏

2021年度東大合格者は両校とも振るわず

 男子の中堅校といえる巣鴨と世田谷は、いわば競合校です。加えて、そのほかの男子中堅校である本郷や攻玉社、城北などとも抜きつ抜かれつ競い合っています。何を抜きつ抜かれつしているかというと、男子校の場合は、やはり東大合格者です。しかし、今春の合格実績は攻玉社をのぞいて一桁となり、巣鴨が8名、世田谷が5名と振るいませんでした。もっとも本郷は9名、城北も9名で、唯一攻玉社だけが二桁を出し17名。芝が12名だったことを鑑みると、いわば男子中堅校では攻玉社が独り勝ちといえるでしょう。

御三家、難関男子校の併願先として人気を集める算数1科目入試

 これらの男子校はJR山手線の西側の沿線近くにあり、最寄り駅はそれぞれ世田谷が三宿(渋谷乗換)、巣鴨が大塚、ついで言えば本郷が駒込、攻玉社が目黒不動(目黒乗換)。例外は東武東上線の上板橋にある城北で、芝は地下鉄の御成門か神谷町と交通至便です。
 したがって実は、巣鴨と世田谷の午後入試の受験生の「午前」の受験校は、上記の中堅男子校との併願が多くなります。午前入試の巣鴨の難度がSS(四谷大塚偏差値)55なので、57の城北、58の本郷、59の芝などの受験生の併願先となっているのです。もちろん、併願優遇を利用するために午前も午後も「巣鴨」という受験生は多くいます。ただし、算数1科目となる午後の巣鴨はSS63と8ポイントも難しいため、算数の得意な受験生であることが求められます。
 一方の世田谷も事情は同じです。午前入試がSS57なので、その併願は56の攻玉社、55の巣鴨の受験生が多くなります。ちなみに、世田谷の午後入試は巣鴨と同じく算数1科目であり、SS61と午前より4ポイント難しくなっています。
 これらに加えて、難関校からも受験生があり、巣鴨ならSS71の開成、世田谷なら同じく開成に加えてSS66の駒東の併願先になっています。特に世田谷と駒東は、駒東から世田谷に下り坂を15分ほど歩けば到着するくらいの近さです。下り坂がミソで、滑り止めを心して受験することになります。

午前入試は大きな倍率差。医学部合格者数が影響か

 面白いことに午後入試の難度は、四谷大塚とサピックスで2ポイントしか違いません。午前入試の両校の偏差値は7ポイントから9ポイントも差があるにもかかわらず、です。逆に言えば、サピックスの偏差値では巣鴨、世田谷ともに13ポイントも午前より午後の入試が難化しています。四谷大塚偏差値では巣鴨で8ポイント、世田谷で4ポイントの難化(午後が午前に比べ)となっています。
 このように午後入試はかなり難しい、ということが浸透し、倍率は両校とも下がっています。直近2年でみると、巣鴨3.0→2.6(受験者数約700名→600名)、世田谷2.0→1.9(受験者数約500名→400名)とかなり絞られてきている印象です。よく研究して受験している様子がうかがえます。どちらを受験するかで悩んだ場合は、偏差値で判断するよりも、実際の問題で判断したほうがよいと考えられるでしょう。
 そのほかの日程を見ると、実はいずれも2月2日午前に入試があり、今春は巣鴨の実倍率が2.8、世田谷は同1.9となりました。この倍率差は巣鴨に医学部合格者が多いという事情の差かな、と思います。いずれの難度も午後入試ほど高くはなく、特に世田谷は受けやすいといえるでしょう。