2022.1.31

第 13 回

桜蔭 VS 豊島岡女子

トップの桜蔭
チャレンジャーの豊島岡女子
授業料にも表れる
両校の異なる方針

森上教育研究所 所長 森上展安氏

入試日程からわかる各校の戦略

 桜蔭と豊島岡女子の立ち位置は、トップとチャレンジャーそのものと言えます。まず入試がそうです。2月1日1回のみの桜蔭。対して2日、3日、4日の3回実施の豊島岡女子は所謂併願校の立ち位置を徹底しています。
 豊島岡女子が今のように桜蔭に次ぐ大学合格実績を出す以前から、2日には白百合、洗足、吉祥女子、そしてかつては鷗友があり、3日には国立大付属や公立一貫校入試があり、4日となって初めて他に有力校がない状況で様々な併願が可能になっています。
 それに、先に挙げた洗足、吉祥女子、かつての鷗友はいずれも1日にも入試を行い、第一志望の受験生を取り込む方策を講じています。しかし、豊島岡女子はこの1日入試策をとりません。それは女子御三家と言われる桜蔭、女子学院、雙葉の難関3校の受験生の「併願者」を主としてターゲットにしているからです。
 上記の3校のように1日入試を加えると、2日以降の募集定員数を少なくしなくてはなりません。そうなると、2日入試を160人という大枠で募集することはできなくなります。ちなみに洗足も吉祥も2日は100人募集ですから、その2校と比較すれば、160人募集の豊島岡女子は実に頼もしい大規模募集校ということになります。
 2日の豊島岡女子の受験者数は、ちょうど1,000人くらいです。女子御三家の受験者は桜蔭約500人余り、女子学院650人余り、雙葉は350人余りで、合計1,500人余りであり、現状その相当数が豊島岡女子を併願しているといえます。
 実は、かつて2日の御三家の併願校の主流は白百合でした。女子学院と雙葉がキリスト教主義教育校だったからです。しかし、白百合は募集枠60人でリスクが大きく、非キリスト教である桜蔭との親和性で言えば豊島岡女子なのですね。大学合格実績向上と共に、次第に豊島岡女子が主流の座を占めるようになりました。

桜蔭を意識する豊島岡、お茶の水女子大附属を意識する桜蔭

 豊島岡女子が桜蔭を意識していることは、桜蔭の授業料が447,600円(2021年度)であるのに対し、豊島岡女子のそれは444,000円(同上)とわずか3,600円の違いしかないことにも表れています(もっとも納付金総額では桜蔭の100万円強に対し、豊島岡女子は127万円強ではありますが)。これはやはりお茶の水女子大附属から分離独立した印象のある(お茶の水同窓会『桜蔭会』による設立)桜蔭としては、お茶の水女子大附属がモデルでありライバルなので、あまり高い授業料は考えていないということなのかもしれません。

豊島岡女子が示す女子御三家併願校としての存在感

 納付金総額が若干高くなっている豊島岡女子ですが、大学合格実績においては女子御三家併願対象校として替えのきかない存在になっています。したがって、女子学院、雙葉などの納付金総額と比較して同程度であっても、十分比較優位性があるともいえるでしょう。
 また、90名の入学受け入れをしていた高校募集を今年度から停止しました。中学募集を増やすか学費を増やすかのいずれかの対応をすると考えられていましたが、来年度は教育充実費を年間6万円値上げするという結果にとどまっています。