2021.9.10

第 10 回

鷗友学園女子 VS
吉祥女子

東京女子御三家の
人気併願校
「第一志望」に
選ばれるための奮闘
第一志望率を上げるための募集戦略の違い

森上教育研究所 所長 森上展安氏

2月1日受験者数で桜蔭・女子学院と競り合う人気校

 吉祥女子はこの2021年入試から、2月1日と2日の2回入試に移行しました。実は鷗友は2016年入試からそれまでの3回入試を2回入試にしており、吉祥女子もそのあとを追ったことになります。
 両校は最難関校とされる桜蔭、女子学院、雙葉、豊島岡女子などよりワンランク受け易い難関校に位置します。卒業生対比の国立大合格者数の占有率は、今春で桜蔭70%、豊島岡女子50%には及ばないものの、鷗友は40%、吉祥女子は35.5%を出しており、女子学院の43%、雙葉の40%と大差ありません。

第一志望率を上げるための両校のアプローチ

 そうした状況から、いわゆる御三家とよばれる最難関の併願校と目され、第一志望率の増加が課題となっています。両校とも、3回あった入試を2回にすることで第一志望率を上げることに成功しています。
 ただ、そのアプローチは若干違っていて、鷗友が2月1日に180名、2月3日に40名の募集とする一方、吉祥女子は2月1日に134名、2月2日に100名の募集としています。両校のこのような位置取りの変化があったため、2021年入試の2月1日受験者数では、1位の女子学院についで長らく2位の座を守っていた吉祥女子が鷗友にその座をゆずり、吉祥女子は4位に下がりました。ちなみに3位は桜蔭です。
 鷗友の2月1日の定員枠は、女子学院の240名、桜蔭の235名についで180名と多く、かつ倍率が2倍そこそこということで、安全志向が強まった受験状況の中、鷗友に受験生が集まりました。
 アプローチの違いはむしろ2回目の定員枠によくあらわれています。吉祥女子は2月2日入試の定員枠が100名、鷗友は2月3日入試の定員枠が40名と少なくなっています。第一志望者が多い2月1日入試の枠を大きくとるか、少なくとるかという戦略の違いであり、その結果、吉祥女子の2月2日入試は豊島岡女子に次いで2位の受験者数になっています。そして鷗友も2月3日入試で豊島岡女子についで2位になっており、進学校の格付けのように受験者の数の序列が端的に示されています。

両校の入試傾向、校風の違い

 入試問題に関しては、鷗友は以前から記述が多いのが特徴です。吉祥女子も国語は記述が多いものの、むしろスピードが求められる出題になっています。
 両校とも最難関校との併願者が多いという実情から、理系進学者が鷗友で37%、吉祥女子で44%と難関女子校らしい理系進学者の多さとなっています。
 一方、学校文化については、鷗友はキリスト教を基礎として戦後に出発、吉祥女子は地理学の権威が昭和の初期に創立したという違いがあります。いずれもこの30年での進学校化が著しく、その意味では第二世代が母校にわが子を通学させようとするサイクルに入っています。
 鷗友はキリスト教文化もあって、どちらかといえば個性に重点をおく学校文化であるのに対し、吉祥女子は学校行事の球技大会の団結力といったところにみるように、伝統的な傾きがあるかもしれません。授業料は鷗友が少々高くなっています。
 中学入試状況がしばらく厳しいことが予想されるため、倍率の低さや定員枠の大きさで人気が左右される状況が続きそうです。